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2017.01.11

『償却費として損金経理した金額』の定義

※2016年6月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

日本中央税理士法人の見田村元宣です。

今回は「『償却費として損金経理した金額』の定義」ですが、

平成25年5月28日の裁決をご紹介します。

まず、具体的な裁決の前に条文を確認しましょう。

〇法人税法第31条第1項(減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法)

内国法人の各事業年度終了の時において有する減価償却資産につき

その償却費として第22条第3項(各事業年度の損金の額に算入する金額)の

規定により当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入する金額は、

その内国法人が当該事業年度においてその償却費として損金経理をした金額

(以下この条において「損金経理額」という。)のうち、その取得をした日

及びその種類の区分に応じ、償却費が毎年同一となる償却の方法、償却費が

毎年一定の割合で逓減する償却の方法その他の政令で定める償却の方法の

中からその内国法人が当該資産について選定した償却の方法(償却の方法を

選定しなかつた場合には、償却の方法のうち政令で定める方法)に基づき

政令で定めるところにより計算した金額(次項において「償却限度額」

という。)に達するまでの金額とする。

〇法人税基本通達7−5−1(償却費として損金経理をした金額の意義)

法第31条第1項《減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法》に

規定する「償却費として損金経理をした金額」には、法人が償却費の科目を

もって経理した金額のほか、損金経理をした次に掲げるような金額も

含まれるものとする。

(1)令第54条第1項《減価償却資産の取得価額》の規定により

減価償却資産の取得価額に算入すべき付随費用の額のうち原価外処理を

した金額

(2)減価償却資産について法又は措置法の規定による圧縮限度額を超えて

その帳簿価額を減額した場合のその超える部分の金額

(3)減価償却資産について支出した金額で修繕費として経理した金額のうち

令第132条《資本的支出》の規定により損金の額に算入されなかった金額

(4)無償又は低い価額で取得した減価償却資産につきその取得価額として

法人の経理した金額が令第54条第1項の規定による取得価額に満たない

場合のその満たない金額

(5)減価償却資産について計上した除却損又は評価損の金額のうち損金の額に

算入されなかった金額

(注)評価損の金額には、法人が計上した減損損失の金額も含まれることに

留意する。

(6)少額な減価償却資産(おおむね60万円以下)又は耐用年数が3年以下の

減価償却資産の取得価額を消耗品費等として損金経理をした場合のその損金経理をした金額

(7)令第54条第1項の規定によりソフトウエアの取得価額に算入すべき

金額を研究開発費として損金経理をした場合のその損金経理をした金額

〇法人税基本通達7−5−2(申告調整による償却費の損金算入)

法人が減価償却資産の取得価額の全部又は一部を資産に計上しないで

損金経理をした場合(7−5−1により償却費として損金経理をしたものと

認められる場合を除く。)又は贈与により取得した減価償却資産の取得価額

の全部を資産に計上しなかった場合において、これらの資産を事業の用に

供した事業年度の確定申告書又は修正申告書(更正又は決定があるべきこと

を予知して提出された期限後申告書及び修正申告書を除く。)に添付した

令第63条《減価償却に関する明細書の添付》に規定する明細書に

その計上しなかった金額を記載して申告調整をしているときは、

その記載した金額は、償却費として損金経理をした金額に該当するもの

として取り扱う。

(注) 贈与により取得した減価償却資産が、令第133条《少額の

減価償却資産の取得価額の損金算入》の規定によりその取得価額の全部を

損金の額に算入することができるものである場合には、損金経理をした

ものとする。

これを踏まえて、本裁決です。

本件では、新規で取得した冷暖房設備95万円が修繕費として処理されて

いました。

これに関して、請求人は下記と主張しました。

原処分庁は、本件通達(3)の定めに該当しないから減価償却費を控除する
     
ことはできないとしているが、本件冷暖房設備を現実に7か月間は使用して

おり、その取得価額について損金経理もしている。

したがって、本件冷暖房設備取得価額は、本件通達に定める償却費として

損金経理した金額に該当するとみるべきであり、本件通達に例示された

文言を形式的に適用して判断すべきではない。

そうすると、本件冷暖房設備取得価額のうち、損金の額に算入されない

金額は、本件冷暖房設備の償却限度額92,945円(耐用年数15年、

償却率0.167、償却月数7で計算)を超える857,055円であり、

当該償却限度額については、その全額が損金の額に算入される。

しかし、国税不服審判所は納税者の主張を認めませんでした。

イ 法令解釈

減価償却費の損金算入については、法人税法第31条第1項及び法人税法

施行令第58条において、確定した決算において償却費として損金経理する

ことが要件とされているところ、その趣旨は、減価償却費が法人の内部計算

において計上される費用であることから、法人が確定した決算において、

減価償却資産につき償却費として費用計上する意思表示を明確にしたものに

限り、課税の公平を維持する観点から、定められた償却限度額の範囲内で

その損金算入を認めたものと解される。

なお、法人税法第31条第1項を形式的に解釈すれば、償却費として経理

した金額は、償却費の科目により経理されたものに限られるようにも

解されるが、償却費の科目をもって経理する以外の方法で損金経理した場合

であっても、減価償却資産の費用化の方法として、そのような損金経理の

方法が行われたことについて、企業会計上合理性が認められる場合で、

償却費の科目による費用計上に相当するものとして税務上特に弊害がないと

認められるものについては、その性質上、償却費として損金経理をした

金額に含めて差し支えないものと解され、本件通達の定めは、その例示

として、当審判所においても相当と認められる。

ハ 結論

(イ)本件冷暖房設備の取得価額を修繕費として経理したことが、償却費

として損金経理したものとみて差し支えないか否かについて、具体的には、

本件通達(3)及び(6)の適用の有無を検討することとなるところ、

本件冷暖房設備は新たな減価償却資産の取得であり、その取得価額が

おおむね60万円以下ではなく、その耐用年数が3年以下ではないこと

からすれば、本件通達に定める(3)及び(6)のいずれの適用もない。

(ロ)そうすると、本件冷暖房設備の取得価額は償却費として損金経理

されておらず、償却費として損金経理したものとみて差し支えない場合にも

当たらないから、本件冷暖房設備の取得価額のうち償却費として損金の額に

算入する金額はなく、その全額が損金の額に算入されない。

(ハ)これに対して、請求人は、本件冷暖房設備を現実には7か月間は使用

しており、その取得価額について損金経理もしているのであるから、

本件通達に定める償却費として損金経理した金額に該当するとみるべき

であり、本件通達に例示された文言を形式的に適用して判断すべきでは

ない旨主張する。

しかしながら、そもそも、法人税法は、減価償却費の損金算入について、

確定した決算において「償却費」として損金経理することを要件としている

ところ、償却費以外の科目で費用とした金額について、税法上一切これを

減価償却費として認めないとすると実情に即さないと考えられることから、

償却費以外の科目であっても償却費として損金経理したとみて差し支えない

ものを本件通達において定めたものであり、この定めは、償却費として

損金経理したとみて差し支えないものを限定的に例示したものと解され、

当該減価償却資産を事業の用に供していて取得価額を損金経理したとしても、

そのことをもって全てが償却費として損金経理したとみて差し支えない

わけではないことは明らかである。

結果として、請求人の主張は認められませんでした。

ちなみに、TKC税務Q&Aに「機械の取得を材料仕入と経理した場合の

償却費について」という事例がありますが、これも同様の結論とされています。

個人的には、その事業供用期間における「減価」という現象は発生しており、

当該期間の減価償却費は認められてもいいのではないかとも考えますが、

現状の取扱いはこうなっています。

原因はともかく、減価償却費とすべきものが違う勘定科目になっている場合も

あり得ますので、決算時には必ず、可能性の高い科目を中心にチェックする

ことが重要です。

 

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