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2017.05.26

不納付加算税が全部取消しとなった実例

※2017年1月の当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

今回は「不納付加算税が全部取消しとなった実例」ですが、

平成25年5月21日の裁決を取り上げます。

多くの個人法人が不動産を賃借していますが、その貸主が居住者から

非居住者に変わった場合、支払賃料から源泉所得税を徴収し、

納付しなければなりません。

しかし、借主に随時この情報が通知される訳でもなく、

これをリアルタイムで把握することが難しい場合も少なくありません。

この場合、源泉所得税の納付漏れということに発展しますが、

これは不納付加算税の対象になってしまうのでしょうか?

国税通則法第67条(不納付加算税)第1項ただし書には

「正当な理由があると認められる場合」は課されないことになっています。

本件はこれに関して争われた事例です。

結論は全部取消しであり、「源泉所得税の納付が法定納期限後になったことに

ついて真に納税者の責めに帰することのできない客観的事情があったと

認められる」と判断されました。

この理由は下記です。

〇本件賃貸借契約書及び本件賃貸料改定承諾書を取り交わした相手方は

いずれも本件賃貸人の代理である母Lであって、それ以外で母Lと

接触したのは平成18年の請求人の店舗の開店祝いの僅か1回だけで

あったこと。

〇本件店舗等の賃貸借に係る連絡は本件管理人と行っており、本件管理人と

平成23年の夏に接触した後の接触は、本件免除証明書の提示を受けた

平成24年4月17日であったこと。

〇更に、請求人が本件賃貸人と接触した事実は認められず、その必要性も

なかったものと認められ、本件賃貸借契約に係る月々の賃借料の支払は

契約締結時から一貫して本件賃貸人口座に振り込まれており、その支払に

際して本件賃貸人から領収書等住所が分る何らかの書類が交付された

事実は認められず、請求人の住所の変更を知り得る状況にはなかったと

認められる。

〇これらのことからすると、本件賃貸借契約に係る取引において、

本件賃貸人が非居住者に該当することになったことを請求人が直ちに

知り得る状況にはなかったと認められる。

〇請求人は、平成24年4月17日に本件管理人から連絡があって初めて、

本件賃貸人が非居住者に該当することとなったことを了知するに至ったことが

認められ、平成24年1月20日及び同年2月20日に本件賃貸人口座に

振り込んだ本件各賃借料について、所得税を源泉徴収すべきであったことを

認識し、現実に、同年4月26日に納付手続を採っており、本件管理人から

連絡後、遅滞なく納付する意思を有していたものと認められる。

〇請求人は、本件賃貸人が非居住者に該当することとなった事実を直ちに

知り得ていれば、当然に法定納期限内に納付が行われたであろうことは、

十分推認され、本件各源泉所得税額の納付が法定納期限後となった原因は、

本件賃貸人からの連絡が遅れたためであると認められる。

「常識」から判断すれば、上記のような状況においては「正当な理由」は

認められて当然と考えます。

ちなみに、元高松国税不服審判所長等を歴任された伊藤義一先生の著書

「税法の読み方 判例の見方」によれば、「正当な理由」とは下記と

書かれています。

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「正当な理由」は、胸を張って主張できる理由

「正当な理由」とは、「その事態に陥ることを避けるため、最善の努力を

したが、このような事情の下でこのようになったのであり、自分には

責任はない」と、胸を張って主張できる理由であり、行政罰を免れる場合に

用いられます。「正当防衛」の”正当”とほぼ同じ意味であって、

あることをしたこと、又はしなかったことについて正当性があると主張

できる理由です。主観的な理由ではなく、客観的に誰もが納得できる理由で

なければなりません。

 

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