2016.07.29

取下げに応じるべきか?

※2015年6月の当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

対税務署に対する実務的対応として、「取下げ」をするのか
しないのか、判断に迷うポイントがあるかと思います。

もっともよくある事例は、申請や届出です。

いったん申請・届出を提出したが、諸事情により
その効力を失わせたい=提出しなかったことにしたい場合は、
効力発生前であれば、取下げ(書)を出することで、
「撤回」と同じ効力を得ることが可能です。

もちろん、「取下げ(書)」なるものは、
国税通則法をはじめ、各個別税法にも法的規定は
何らありませんから、所定様式は存在しません。

また、取下げを一方的にしたとしても、
税務署は理解できないでしょうから、事前に
担当者とやり取りしておく必要があります。

ここまでの「申請や届出」に関する取下げは
問題ないかと思います。消費税をはじめ、
税務署・納税者双方の問題で、取下げないと
進まない類のものは多くありますので。

さて、取下げに応じるべきか、もっとも判断に
迷うのは「申告(書)」の場合です。

こちらのブログ
「修正申告の事前提出を調査官にいつ伝えるか?」
でも書きましたが、税務調査初日までに誤りを発見し、
修正申告を提出した場合、取下げを要請してくる
税務署(調査官)までいます。

まず、申請や届出とは違い、申告に対して
取下げなどいう行為は(基本的に)存在しません。

申告期限内で誤りに気付いた場合は「訂正申告」
(これも法的には何の規定もありませんが、
実務上は有効とされています)、申告期限後は
「修正申告」「更正の請求」のみが認められており、
法律規定ではないにしても、「更正の申出」や
「嘆願」による是正も考えうる実務上の措置です。

結局のところ、申告(書)に対して税務署が取下げを
要請・要求してくるというのは【税務署に有利な場合】
しかあり得ない、ということです。

逆の立場になって考えてみると、よくわかります。

税理士(納税者)が申告書に対して取下げをしたら、
税務署は認めるのか?といえば・・・そんなことが
可能なのであれば申告の「撤回」がいつでも認められる
ということになり、あり得ないことはすぐにわかります。

私は、税務署が申告に対して取下げを要求してきたら、
納税者にとってよっぽど有利な条件でない限り、
応じないように伝えています。

実際にあったケースになると、不服申立てをした後、
税務署から電話で「取下げしてください」と
要請された事案もありました。

税務署が取下げを要請している理由を聞いてみると、
「この不服申立ては国税が勝つのでやるだけムダ」
と言われたそうです・・・ヒドすぎます。

税務署も申告に対して取下げを要請するくらいですから、
修正申告・更正の請求を受け入れると面倒であったり、
更正(処分)をすることができない、と
言っているのに等しいわけです。

「取下げ」という法的でない手続きだからこそ、
税務署の言いなりに処理することは
相当危険であることは認識しておくべきなのです。

 

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

毎週水曜日に配信する『税務調査対策のメールマガジン』では、最新の税務調査事情はもちろんのこと、調査官の心理、税務署のウラ側など元国税調査官だからこそ語れるマニアックなテーマまでをお届けします。
「こんなことまで話して本当に大丈夫ですか?」 と多くの反響を頂く税理士業界では話題のメルマガです。
お名前とメールアドレスを登録するだけで 毎週【 無料 】でメルマガを配信いたします。