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2018.07.12

海外の滞在日数が250日以上でも居住者と認定された事例

※2017年12月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

今回は「海外の滞在日数が250日以上でも居住者と認定された事例」ですが、

裁決(平成29年1月23日)を取り上げます。

なお、本裁決は非公開裁決であり、TAINSにも登載されておりませんので、

「税のしるべ」(第3292号)及び国税不服審判所のホームページで

検索した結果をベースにお伝えします。

まずは、タックスアンサーNo.2875「居住者と非居住者の区分」では

下記とされています(法人部分については割愛)。

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1 国内法による取扱い

我が国の所得税法では、「居住者」とは、国内に「住所」を有し、

又は、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人をいい、

「居住者」以外の個人を「非居住者」と規定しています。

「住所」は、「個人の生活の本拠」をいい、「生活の本拠」かどうかは

「客観的事実によって判定する」ことになります。

したがって、「住所」は、その人の生活の中心がどこかで判定されます。

ある人の滞在地が2か国以上にわたる場合に、その住所がどこにあるかを

判定するためには、職務内容や契約等を基に「住所の推定」を

行うことになります。

「居所」は、「その人の生活の本拠ではないが、その人が現実に

居住している場所」とされています。

2 租税条約による取扱い

租税条約では、わが国と異なる規定を置いている国との二重課税を

防止するため、個人、法人を含めた居住者の判定方法を定めています。

具体的には、それぞれの租税条約によらなければなりませんが、

一般的には、次の順序で居住者かどうかを判定します。

個人については、「恒久的住居」、「利害関係の中心的場所」、

「常用の住居」そして「国籍」の順に考えて、

どちらの国の「居住者」となるかを決めます。
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次に、国税不服審判所のホームページで検索した結果、

表示されたものを記載します(一部改定)。

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請求人は、国外に有する住居に年間250日以上滞在しており、

国外に生活の本拠があることから、所得税法第2条《定義》第1項

第3号に規定する居住者に該当しない旨主張する。

しかしながら、居住者該当の判断は、国内に住所を有するか否かによるが、

ここにいう住所とは生活の本拠、すなわち、その者の生活に最も関係の深い

一般的生活、全生活の中心を指すものであって、一定の場所がある者の

住所であるか否かは、客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか否か

により決すべきであるところ、

〇請求人は、国内よりも国外における滞在期間が長いものの、

国内の肩書住所地を住民票上の住所として定めていること、

〇当該住所地所在の居宅(本件居宅)を所有し、

国内滞在中は本件居宅において起居していたこと、

〇金融資産の大部分は国内の金融機関に保有している一方、

国外資産はほとんど有していないこと、

〇当該住所地を自己の住所として国民健康保険に加入していること、

〇請求人と生計を一にする妻は(平成25年中1度も)

国外に出国しておらず、本件居宅に居住していたこと

などの事情を総合的に考察すれば、客観的に生活の本拠たる実体を

有していたのは本件居宅であると認めるのが相当である。

したがって、請求人の生活の本拠すなわち住所は国内の肩書住所地であり、

請求人は所得税法上の居住者に該当する。
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さらに、上記の「税のしるべ」によれば、下記と報道され、

これも請求人の主張が認められなかった根拠とされています。

〇インドネシアに滞在するために取得していたビザは

リタイアメントビザであったこと

〇収入の大半を日本の証券会社とのインターネットを利用した

有価証券取引で得ていたこと

〇インドネシアでの所在地が長期滞在型ホテルの一室であったこと

〇平成25年分の所得税等の申告書でも自己の住所を日本国内の住所と

していたこと

これらの総合判断により、「居住者である」と認定されたのでした。

いかがでしょうか?

確かに、海外に183日以上滞在している場合、

この形式基準は大きな1つの判断材料になります。

しかし、タックスアンサーNo.2012「居住者・非居住者の判定

(複数の滞在地がある人の場合)」にも「滞在日数のみによって

判断するものでないことから、外国に1年の半分(183日)以上

滞在している場合であっても、わが国の居住者となる場合があります。」

とあるとおり、形式だけで判断すべきものではないのです。

海外に移住する方も多いですが、

日本国内において、居住者、非居住者のいずれに該当するかは

総合判断となりますので、ご注意頂ければと思います。

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