2015.03.17

税務調査の録音の仕方

今回のテーマは、『税務調査の録音の仕方』です。

このメルマガやセミナー、税務調査研究会等でも言い続けていることなのですが、
税務調査は「すべてのやり取り」を録音しておくべきです。

最近でもこんな事例がありました。

仕入(現金買付部分)にかかる原始帳票類の一部を紛失しており、
その仕入税額控除を否認されそうになりました。
そこで「調査官」と交渉したところ、「買付した店舗から
領収書などを再発行してもらえるなら、仕入税額控除を認める」
と言ってもらえたため、店舗と交渉し領収書を発行してもらいました。

しかしその領収書を持参して税務署に行ったところ、
「統括官」が「そんなもの認められない」と言って
仕入税額控除を認めてもらえない、との立場に反転したのです。
では何のために店舗と交渉して領収書を発行までしてもらったのか・・・

また別の事案でもこんなものがありました。

支払手数料なのか交際費なのか税務処理がわからなかったため、
納税者同席のもと、税務署の審理部門に行って処理方法を聞いたところ、
「支払手数料」とのことだったので、全額損金算入しました。

ところが、税務調査で交際費だと否認されました。
指摘内容とその根拠には納得せざるを得ませんでしたので、
本税部分は仕方がないとしても、過少申告加算税が問題です。

税務職員の「誤指導」ということであれば、
国税通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」に該当するため、
過少申告加算税は課されないはずです。
しかし、審理担当に言って過去の相談事績を調べてもらったのですが、
事績が残っていないということで、過少申告加算税が課されたのです。

※ちなみに、過少申告加算税に対して取消を求めるには、
 納税者側に立証責任がありますので、気をつけてください。

両方の事案に共通して言えるのは、「録音しておけば結果は変わった」
ということです。

私がいくら「税務調査は録音してください」と言ってもしない理由は、
「録音していいのか?」という(漠然とした)不安でしょう。

税務調査では録音してはならない、という法律がない限り、
税務調査では録音していいのです。(法的には何ら問題ないということです)

また録音したいけれど、ICレコーダーなどが見つかったら怒られるのでは?
という不安もあるかと思いますが、まず法的に問題ないこと、
そして実務上はICレコーダーを隠して録音することです。

「隠して録音」というと盗聴のように思えますが、
本人(納税者や税理士)が調査官と話していることの録音ですから、
盗聴ではなく「記録」です。

ちなみに「盗聴(とうちょう)とは、会話や通信などを、当人らに
知られないようにそれらが発する音や声をひそかに聴取・録音する行為である」。
(ウィキペディアより)

ベストは、黒のメッシュの筆箱(立てられるものがいいです)の中に
ICレコーダーを入れておき、机の上に置いておくことです。
内ポケットであれば、調査官の声が拾いにくくなります。

また録音できない電話は控えるべきでしょう。
(録音機能があるなら録音すればOKです)
電話の場合は特に、後で「言った言わない」の争いになりがちです。

録音したデータは、モメたときに出せばいいものであって、
モメなければ一定期間経過後に消去すればいいのです。

調査官が言ったことを翻してきた場合、それを反論・立証するのは納税者側の責任です。
(調査官は自らに不利なことを立証するわけがありません)

不当な税務調査から顧問先を守るためには、
録音は必須の行為だと考えておくべきなのです。
あとで録音しておけばよかった・・・とならないために。

 

※2011年12月当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんので
ご注意ください。

また、ブログの内容等に関する質問は、一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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