2015.09.08

税理士の怠慢と重加算税

こんにちは。日本中央税理士法人の見田村元宣です。

 

さて、今回は「税理士の怠慢と重加算税」です。

今回の事例は相続税の申告に関し、税理士の怠慢により重加算税が賦課され、

争った結果、納税者が勝った事例です。

かなり極端な事例かもしれませんが、ここまで極端であっても重加算税を

回避できたという意味では覚えておくべき事例です。

また、他の税理士が怠慢な申告を行い、

その税務調査を皆さんが担当することもあり得るでしょう。

そういう2つの意味から、この事例を取り上げました。

なお、これは平成11年10月25日の裁決で、

TAINSコードは F0-3-014 です。

 

 

まずは、事案の概要です。

 

 

○ 相続人(配偶者等)は昭和41年頃から委任をしている税理士に 相続税の申告を依頼し、必要資料を提出

 

○ 税理士は相続財産の把握が十分にできておらず、また、地域の仕事が忙しく、法定申告期限までに正確な申告書を作成できなかった

 

○ 税理士は 「一旦、基礎控除額以下で申告し、後で正確に修正申告する」と相続人に説明し、申告(その後、修正申告書を作成せず)

 

○ 相続人は税理士に修正申告のことを何度も依頼

 

○ 税務調査があり、全ての相続財産が確定し、修正申告した結果、 重加算税が賦課決定された

 

○ 隠ぺい、仮装した財産については、配偶者の税額軽減も適用不可

 

正直、あり得ない話ですが、現実に起こった話なのです。そして、ここでいう隠ぺい、仮装ですが、税理士の行為も納税者自身の行為として取り扱うこととされています。しかし、重加算税は回避できているのです。

 

以下、裁決文の中から「考え方」として重要な部分をピックアップしますしますので、ご覧ください。

 

 

○ 配偶者の税額軽減における隠ぺい、仮装行為の主体である「納税義務者」とは、被相続人の配偶者に限らず、相続又は遺贈により財産を取得したすべての者をいう

 

○ ここにいう隠ぺい、仮装は、国税通則法第68条第1項の重加算税の賦課要件である隠ぺい、仮装と同義

  

○ 配偶者の税額軽減の適用除外に該当するというためには、納税義務者のした過少申告行為そのものが隠ぺい、仮装というだけでは足りず、過少申告行為そのものとは別に、隠ぺい、仮装となる行為が存在し、これに合わせた過少申告行為がされたことを要する

 

○ 架空名義の利用や資科の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要ではない

 

○ 納税義務者が当初から相続財産を隠匿し、過少申告に係る課税価格が正当な課税価格であるように装うことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合には、隠ぺい、仮装となる

 

○ 納税義務者が納税申告を第三者に委任した場合でも、納税義務者は自己の責任と判断において第三者を自己の代理人ないし履行補助者としたものである

 

○ 受任者たる第三者がした申告の効果、態様はそのまま納税義務者の申告として取り扱うべきであり、受任者たる第三者が行った隠ぺい、仮装行為も納税者自身の隠ぺい、仮装行為として取り扱うべき

 

ここで注目して頂きたいのは最後の考え方ですが、税理士の怠慢はあったものの、納税者自身と税理士に隠ぺい、仮装という意図、行為は認められないということで重加算税は回避されたのでした。

いかがでしょうか?

ここまでの話でありながら、「重加算税」と「配偶者の税額軽減の適用不可」を回避できたたのはあくまでも「重加算税=隠ぺい、仮装」だからです。しかし、原処分庁は重加算税の賦課決定をしてきている訳です。この事例は極端な事例ではありますが、ここまでの事例であっても重加算税を回避できたという事実を覚えておいて頂ければと思います。繰り返しになりますが、あくまでも隠ぺい、仮装が成立して初めて、重加算税の賦課要件が満たされるのです。

 

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なお、2013年7月の当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

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