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2018.11.16

税理士の関与度合いが低い重加算税事案

※2018年4月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社InspireConsultingの久保憂希也です。

確定申告が明け、4月に入って
税務調査が増える時期となりました。

先日公開された裁決事案(平成29年7月~9月分)
http://www.kfs.go.jp/service/JP/idx/108.html
の中から、重加算税について争われ、
納税者が勝った(取消し)事案を取り上げます。

「当初から所得を過少に申告する意図を
有していたと認めることはできないとして、
重加算税の賦課決定処分を取り消した事例」
(平成29年8月23日裁決)
http://www.kfs.go.jp/service/JP/108/04/index.html

この公開裁決事例では、納税者(医師)は
収入の申告漏れを認めており、調査において
修正申告しましたが、その本税に対して
重加算税が賦課されたことにつき争ったものです。

なお、前提事実の列挙は長くなるので
かなり簡素化しますが、本事案の争点には
関与している税理士事務所が絡んでいます。

〇ある口座について丸々収入漏れがあった

〇この口座(への入金)は調査官が発見した
(おそらく資料せんか銀行調査)

〇調査時(当初)には、この口座の通帳を
提示しなかった(する必要がないと考えていた)

〇税理士事務所の担当者にも納税者は
「動きがない口座は見せる必要性が無い」
と考えて、口座の存在を明かしていなかった

〇税理士事務所の担当者も「本人が保有する
すべての口座を見せてほしい」とは
依頼したことがなかった

〇納税者はこの口座に入金があるとは思わず
収入が漏れていること自体を知らなかった
(他の口座に入金されていると思っていた)

この裁決において、審判所が判断している
要素として下記が挙げられます。

・医師として極めて多忙であったこと

・毎年多数の源泉徴収票や支払調書を
受け取っていたことからすると、それらの
源泉徴収票や支払調書の内容を確認しておらず、
それらの中に本件収入に係る源泉徴収票がない
ことに気付かなかったとしても不自然ではない

・売上げの集計を自ら行わず、確定申告書の
作成を税理士に任せきりにしていた

・会計及び税務に係る事務に精通していない

・産業医としての勤務による給与等や報酬等の
多くについて源泉徴収が行われていたこと

国税は、この口座・通帳を税理士に
見せていないことからも重加算税としましたが、
不服審判所の判断は反対に、

「関与税理士に対し、手持ちの源泉徴収票
及び支払調書に加えて本件通帳以外の通帳を
提示することにより、本件収入についても
適正に申告していると誤解していたもの」

と判断しました。

この事案のように(特に個人事業主)、
税理士が深く関与しておらず、かつ
丸投げされているような顧問先では、
通帳の漏れというものが存在し得ますが、
税務調査ではほぼ間違いなく
重加算税だと指摘を受けることでしょう。

通帳を1冊分丸々漏れてしまったような
理由があって、かつ税理士事務所として
確認をしていなかった場合は、
重加算税ではないと反論ができるわけです。
(税理士がよく確認しても見せなかった
とするなら本人の隠ぺい行為で重加算税です)

このあたりの事実関係は、
「税理士事務所も悪い」として
重加算税を受け入れてしまうケースが
多いように感じますが、事実は逆です。

この公開裁決事例は、関与度合いが高くない
顧問先の調査(重加算税)で反論材料として
使えますので、ぜひ覚えておいてください。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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