2016.03.15

納税の猶予に関する裁決

※2014年7月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

日本中央税理士法人の見田村元宣です。

さて、今回は「納税の猶予に関する裁決」ですが、

平成21年7月6日の裁決を取り上げますが、国税通則法第46条第2項に関する納税の猶予が問題になった事例です。

この第2項では次のいずれかに該当する事実があり、納税者がその国税を一時に納付することができない場合に認められます。

〇 納税者がその財産につき、震災、風水害、落雷、火災その他の災害を

  受け、又は盗難にかかつた

〇 納税者又はその者と生計を一にする親族が病気にかかり、又は負傷した

〇 納税者がその事業を廃止し、又は休止した

〇 納税者がその事業につき著しい損失を受けた

〇 前各号の一に該当する事実に類する事実があつた

なお、最後の「類する事実」とは個別通達によれば、詐欺や横領等があった

ことにより財産を喪失した、交通事故の損害賠償をした等とされています。

http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/chosyu/760603/02s/01.htm(2016/03/15 時点 リンク切れ)

では、具体的な裁決ですが、この事例は下記の状況でした。

〇 土木工事業を営む審査請求人が納税の猶予をしたが、不許可

〇 納税の猶予の申請理由として「平成12年の○月、C社の倒産によるあおり

  倒産を生じました。仕事を継続させ、従業員の生活を守る為にも、手形

  の事故により、発生した保証や関係会社への負債分の支払を、現在も

  続行中です。銀行の取引きが停止され、仕事を続ける為の資金繰りも、

  困難を来す状況です。身内からの借入れも、これ以上は望めません。

  消費税を支払う為の、まとまったお金を用意する手段が有りませんので、

  納税の猶予を申請致します。」と書いてある。

〇 請求人は、C社の依頼を受けて、同社に対して額面金額合計○○○○円の

  約束手形5通(以下「本件各手形」という。)を振り出した

〇 本件各手形は、C社からD社に対して裏書譲渡されており、手形所持人と

  なったD社が、取引銀行を通じて本件各手形について各満期日に支払呈示

  をしたが、支払を拒絶された。

〇 平成13年1月22日、E社(D社の100%出資の子会社で、平成18年4月にD社

  に吸収合併された。)は、C社との間の平成8年12月2日付の信用保証委託

  契約に基づき、C社の負う本件各手形債務○○○○円をD社に対して代位

  弁済し、本件各手形を譲り受けた

〇 平成15年12月18日、E社は、本件各手形の所持人として振出人である

  請求人に対して、本件各手形の額面金額合計○○○○円及び年6%の割合

  による金員の支払を求め、F簡易裁判所に対して手形債務金履行請求の

  調停を申し立てた

〇 平成16年1月○日、請求人とE社との間で、請求人に手形債務として○○

  ○○円の支払債務が存在し、請求人はE社に対し、同債務のうち360,000

  円を平成16年2月から平成19年1月まで毎月1万円ずつ分割して弁済する

  こと、同債務から360,000円を控除した残額等の支払方法は平成19年1月

  以降当事者双方が協議して定める旨の調停が成立した

〇 請求人は、上記の調停に基づき平成16年9月から平成19年1月まで、

  及び、平成19年2月以降現在まで、E社に対して、毎月1万円の返済を

  行っている

ここまでの状況であっても、原処分庁は

〇 請求人が主張する損失発生の原因はC社の依頼を受けて、C社に対し

  融通手形として本件各手形を振り出したことが原因である

〇 不渡事故を起こし手形債務を負うこととなったこと及び取引先が限定

  されることとなった原因は請求人自身にある

〇 請求人の責めに帰すことができないやむを得ない事由によって売上げの

  減少が生じたものではない

として、納税の猶予を不許可としたのです。

ちなみに、上記個別通達には「事業の休廃止又は事業上の著しい損失に

類する事実」とは「その他納税者が市場の悪化等その責めに帰すことが

できないやむを得ない事由により」という前提が置かれています。

これらを踏まえて、国税不服審判所は下記と判断しました。

〇 請求人がC社に対して振り出した本件各手形は、経営困難に陥ったC社の

  資金調達のため、請求人とC社との間で手形の原因行為なくして振り出さ

  れた、いわゆる融通手形であると認められる

〇 本件各手形の振出しの経緯をみると、請求人は、主要な取引先の一つ

  であるC社に対して約○○○○円の売掛債権を有していたところ、C社が

  経営困難に陥り、このままC社が倒産すれば、当該売掛債権が全額回収

  できなくなることなどから、やむを得ず、本件各手形を振り出したもの

  と認められ、本件各手形の振出しがC社に対する金銭の贈与等と同視

  できるような特段の事情は窺われない

〇 請求人とC社との間では、C社が本件各手形の割引によって借入れをし、

  当該手形の満期日までに借入金を返済することによって、請求人に手形

  債務を負担させないこととしたものの、その後、C社が倒産したため、

  請求人が手形債務を弁済しなければならなくなったのであり、このこと

  は、債務保証と類似の関係と認められる。そうすると、本件各手形の

  振出し及びC社の倒産による手形債務の負担について、請求人に帰責性

  があるということはできない

〇 猶予通達第2章第1節1(3)ホは、通則法第46条第2項第1号に類する事実を

  具体的に例示しているところ、本件のように取引先に対して融通手形を

  振り出した場合は、例示されている事実のいずれにも当たらない。

〇 上記で述べたとおり、納税の猶予が、災害や盗難、病気、事業の休止、

  事業上の著しい損失等の事実が生じた場合には、不測の出費、あるいは、

  予定していた入金の不能又は遅延により国税を一時に納付することが

  困難となる場合が多いと考えられることから、納付することができない

  金額を限度として、納税を猶予することができることとして、そのような

  納税者の救済を図ろうとしたものと解されることからすると、振出人

  である請求人と受取人であるC社との人的関係や取引上の要請から、

  やむを得ず融通手形を振り出し、融通手形の受取人であるC社の倒産

  による手形債務を負うという、不測の事態により資金繰りが困難に

  なったという点で、売掛金等の回収が不能になった場合と同視できる

  ので、本件の場合は、通則法第46条第2項第1号に類する事実として、

  猶予該当事実に当たると解するのが相当である

 結果として、納税の猶予は認められた訳ですが、逆に認められなかった

 事例もあります。

 http://www.kfs.go.jp/service/JP/78/03/index.html

 いずれにせよ、納税の猶予に関しては、まだまだきちんと理解されていない

 方も多いので、国税通則法46条、国税通則法施行令14条、個別通達を

 1通り見ておき、顧問先に適用できるかもしれない場合は申請をすることを

 検討しましょう。

 個別通達(納税の猶予等の取扱要領)
 http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/chosyu/760603/01.htm(2016/03/15 時点 リンク切れ)

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