2016.02.15

詳細な無予告調査の要件

さて、今回は「詳細な無予告調査の要件」です。

税務調査の手続きが国税通則法に規定されてからも、
無予告調査の数は減っていないのではないかと実感しています。
(もっと減るものだと思っていました・・・)

本ブログで
無予告調査の要件」について書きましたが、
おさらいをしておくと、無予告調査には要件があり、
その詳細は通達に明記されています。

「国税通則法第7章の2(国税の調査)関係通達の制定について(法令解釈通達)」

http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/zeimuchosa/120912/

4-7から4-10までが該当部分です。

実は、通達に書かれていませんが、さらに
細かい要件を明記している国税の内部資料があります。

それは、税務調査の手続き全般を規定する
「税務調査手続等に関するFAQ(職員用)」です。
この内部資料はTAINSで見ることができます。

この資料から、無予告調査の部分だけ、
一部を抜き出して解説します。

┌──────────────────────────────────────┐
|問2-3 現金取引を行っていることのみをもって、事前通知を行うことなく調査を|
|    実施することは可能か。                       |
└──────────────────────────────────────┘
(答)
  現金取引を行っているという事実は、事前通知を行うことなく調査を実施する場合の
 判定の一要素にはなるものの、それのみをもって判断することはできません(手続通達
 4-7)。事前通知を要しない調査の適否検討に当たっては、決済手段のみならず、内
 外観調査を含めた資料情報、過去の調査状況、申告内容等から事前通知の例外事由に該
 当するかを総合的に判断することとなります。

→ これは通達に規定されている通り、「現金商売だから
 無予告調査です」は要件に該当しないとしています

┌──────────────────────────────────────┐
|問2-4 「過去に不正計算があった」という理由だけで、事前通知を行うことなく|
|    調査を実施することは可能か。                    |
└──────────────────────────────────────┘
(答)
  過去に不正計算があったという事実は、事前通知を行うことなく調査を実施する場合
 の判定の一要素にはなるものの、それのみをもって判断するのではなく、内外観調査を
 含めた資料情報、過去の調査状況、申告内容等から、事前通知を要しない調査の適否を
 検討する時点において、事前通知の例外事由に該当するかを総合的に判断することとな
 ります。

→ 以前の税務調査で重加算税が課されたというのは
 要件に該当しないと明記されています。

┌──────────────────────────────────────┐
|問2-5 「同業者に不正計算が多い」という理由だけで、事前通知を行うことなく|
|    調査を実施することは可能か。                    |
└──────────────────────────────────────┘
(答)
  「同業者に不正計算が多い」という理由は、事前通知を行うことなく調査を実施する
 場合の判定の一要素にはなるものの、それのみをもって判断するのではなく、内外観調
 査を含めた資料情報、過去の調査状況、申告内容等から事前通知の例外事由に該当する
 かを総合的に判断することとなります。

→ 業種から判別しての無予告調査は無いと規定されています。

┌──────────────────────────────────────┐
|問2-6 個人事業を営んでいた際に毎回多額の不正があり、原始記録等も破棄して|
|    いた個人事業者が法人成した場合に、その状況をもって事前通知の例外事由|
|    に当たると判断できるか(法人成後、調査未実施)。          |
└──────────────────────────────────────┘
(答)
  個人事業時の調査内容も、代表者の税に対する認識という観点から、事前通知を行う
 ことなく調査を実施する場合の判定の一要素にはなるものの、それのみをもって判断す
 るのではなく、内外観調査を含めた資料情報、申告内容等から事前通知の例外事由に該
 当するかを総合的に判断することとなります。

→ 4月に実際にあった事案がこれでした。
 無予告調査の理由を調査官に問いただしたところ、
 「個人事業主時代の税務調査で重加算税を課しているなど
 不正があったから」と回答された調査事案です。

このように、通達に明記されていない要件まで、
内部資料では詳細に無予告調査の要件を定めています。

「現金商売」「以前の調査で重加算税」「業種で判断」
「法人成り前の調査事績」は、ただそれだけでは
無予告調査の要件にならないことは知っておくべきです。

 

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

※2014年6月の当時の記事であり、

以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

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