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2016.07.07

調査における説明不足とは?

※2015年5月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社InspireConsultingの久保憂希也です。

2015年4月中旬、メディアに取り上げられたので
ご存知の方も多いかと思います、このニュース。

「東京国税追徴の2.5億円、課税取り消し 説明不足原因」

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150419-00000006-asahi-soci(※現在リンク切れ)

どの記事にも同じような内容が載っており、

「「課税理由を説明しておらず、違法だ」として、
約2億5千万円の追徴課税を取り消していたことが分かった。
説明不足が原因で、課税が取り消されるのは極めて異例だ。」

とのことから、非常に興味がありました。

この記載から推測すると、税務調査の過程において、
下記条文を根拠に違法性が問われたものと思いましたし、
また実際に、税理士が書いた複数のブログでも
私の推察通りに取り上げられていました。

国税通則法第74条の11(調査の終了の際の手続)
2  国税に関する調査の結果、更正決定等をすべきと
認める場合には、当該職員は、当該納税義務者に対し、
その調査結果の内容(更正決定等をすべきと認めた額
及びその理由を含む。)を説明するものとする。
3  前項の規定による説明をする場合において、
当該職員は、当該納税義務者に対し修正申告又は
期限後申告を勧奨することができる。この場合において、
当該調査の結果に関し当該納税義務者が納税申告書を
提出した場合には不服申立てをすることはできないが
更正の請求をすることはできる旨を説明するとともに、
その旨を記載した書面を交付しなければならない。

本裁決は、国税不服審判所のサイトではまだ未公開で、
おそらくTAINSの情報公開がニュースの
リソース先かと思います。

TAINSコード:F0-3-398

裁決文を読んでみると、残念ながら、
上記を根拠とした課税取消の裁決ではなく、
更正の理由附記の程度が足りないことを
理由として課税取消となっている事案です
(そういう意味では、「極めて異例」
とは言えないのが本裁決です)。

前提としては、合資会社の無限責任社員と
なっている被相続人は、法人で約14億円の債務を
保有しており、相続人はこの金額を債務控除して
相続税申告しないと判断したというものです。

興味深いのは、更正の理由附記において、
(金額は細かいので「約14億円」と表記変更)

「あなたは、本件申告において、合資会社A商会の
本件相続開始日における債務超過額約14億円を、
同社の無限責任社員である本件被相続人の債務弁済責任
に基づく債務であるとして本件相続税の相続財産の
価額から控除していますが、本件相続開始日において、
本件被相続人が上記約14億円に相当する債務を
負っていたとは認められません。したがって、
上記約14億円に相当する債務については、
相続税法第13条に規定する『被相続人の債務で
相続開始の際現に存するもの』には該当しませんので、
債務控除は認められません。」

と記載していたものが、不利益処分の理由として
十分な記載とはいえないことから、
課税処分が取り消されたという事実です。

状況としては、理由附記において課税庁は、
根拠条文を明示しているわけですが、
不服審判所は判断内容として、

「当該債務が、「被相続人の債務で相続開始の際
現に存するもの」には該当しない理由について
明らかにするものではない」

として、その根拠に至った理由の詳細を
述べる必要があるとしています。

つまり、根拠条文だけ書いても、それだけでは
理由附記の要件を満たしたことにはならない、
と判断したわけです。

「なぜ債務控除の対象にならないのか?」
確かにこの理由附記だけでは全くわかりません。

もう少し補足説明をしておくと、
相続税には青色申告制度がないため、
平成23年の改正によってはじめて、
行政手続法第14条を根拠とした、
更正時の理由附記が必要とされたものです。

以前からの判決・裁決では、青色申告における
理由附記の程度が不足している判断は多数
存在してきましたが、青色申告ではない
更正に対する理由附記の程度を問われたのは
最近の裁決だからといえるでしょう。

国税通則法第74条の11を根拠とした、
税務調査において税務署には説明責任があること、
さらには、更正には根拠条文だけではなく、
その課税に至った詳細な判断経緯が載っていなければ、
違法な課税になることはぜひ知っておいてください。

 

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