買収側が労働承継する場合のスキーム選択

買収側が労働承継する場合のスキーム選択

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

先日のメルマガで、
事業譲渡において従業員を承継する場合における、
残業代などの簿外負債引継ぎリスクについて解説しました。

今回は、買収側が労働承継する場合の注意点について、掘り下げて解説します。

さて、売却側の従業員を承継する場合、
M&Aによって買収する側から考えると、大きく2つの手法に分かれます。

(1)合併や事業譲渡

売却側の従業員を買収側が引継ぎことになりますが、
その従業員は買収側の従業員となりますので、
給与テーブルや社内規則は統一されます。

(2)株式譲渡や吸収分割

子会社または兄弟会社になり、
その法人は維持されることになりますから、
あくまでも別会社として運営されることになります。

これにより何が変わるかというと、
売却側における従業員の給与水準の方が低い場合(ほとんどがこのケースだと思います)、
(1)を選択すると、いきなり人件費などが上がることになって、
売却側の決算書などでは利益があったものが、
まったく違う利益水準になってしまうリスクがあります。

このため、労働承継する場合であって、
かつ(1)を選択する場合は、人件費等を引き直した損益計算をする必要があります。

このあたりは非常に難しい問題をはらんでいます。
私が数年前にFAに入った案件は下記です。

〇売却側(A社)は資金繰りで困窮し、大口の取引先であるB社に売却を提案

〇B社は買収するメリットが大きいと判断しA社のDDを実施(私が依頼を受けた)

〇B社は当初、株式譲渡によってA社の経営権をすべて受ける意向でしたが、
DDの結果、B社と取引のある一部事業だけを受け入れるという判断に至った
(取引がある事業のセグメントは黒字で、その他事業のセグメントは大きな赤字)

〇しかし、B社とA社については給与テーブルにかなりの乖離があり、
譲渡する従業員について人件費等を計算しなおしたところ、
受入れ事業が赤字になることが判明した

〇2ヵ月にわたってA社とB社の交渉が続きましたが、結局は破談しました

もちろんこのケースも、B社がA社の一部事業を取り込むことによって
シナジーや人材確保など、明確なメリットがあれば良かったのでしょうが、
B社の経営者はそう判断しませんでした。

このケースでは、株式譲渡を選択できれば
給与水準を変える必要はありませんでしたが、
実際は取り込みたくない事業があったこと、
さらには、実際のところ吸収分割によって
一部事業のみを子会社化・別会社化できましたが、
それにかかる費用等を勘案して、吸収分割も選択しませんでした。

従業員を承継する場合で、
特に売却側と買収側の給与水準に乖離が大きい場合は、
その再計算が必須になり、M&Aスキームの選択が複雑になります。

この点は、ぜひ注意してください。

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