個人事業主をM&A(買収)する際の営業権について

個人事業主をM&A(買収)する際の営業権について

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

前回から引続き、事業譲渡の際に認識・発生する「営業権」について取り扱います。

すでに解説したように、士業(一身専属的な事業)などの場合は特に営業権を計上するのは難しいです。

一方で、買収する側はできる限り営業権を計上したい意向があるため、この点M&Aに関わる専門家として、意向をくむことが難しい論点です。

よくある対応方法として、M&A当事者の契約書において営業権・金額を明記するというものですが、営業権の認識にあまり意味がない行為でしょう(契約書に明記さえすればいいという話ではない)。

契約書は当事者双方の私的行為としては有効ですが、営業権という会計・税務上の認識としては別問題です。

これは、不動産売買における消費税に似ています。
購入者は課税仕入額や減価償却費を増やしたいことから、土地・建物を一体で購入する場合に、建物部分の金額を増やそうとするわけですが、
税務上は総額から土地・建物部分を按分計算することになり、契約書と適正な税額計算は別問題という論点になります。

また「営業権」というと税務上は財産評価基本通達を思い浮かべるわけですが、M&Aの場合は
第三者間の取引になることから、取引価額が時価と推認されることになり、そもそも財産評価基本通達は適用になりません。

さらには、一身専属的な事業については財産評価基本通達165(営業権の評価)注書きで、「医師、弁護士等のようにその者の技術、手腕又は才能等を主とする事業に係る営業権で、その事業者の死亡と共に消滅するものは、評価しない」とされていますから、同通達の適用をしたとしても営業権を評価しない業種もあるわけです。

前回も取り上げた裁決(平成22年6月30日)
http://www.kfs.go.jp/service/JP/79/16/index.html
では、営業権について「企業の長年にわたる伝統と社会的信用、立地条件、特殊の製造技術及び特殊の取引関係の存在並びにそれらの独占性等を総合した、他の企業を上回る企業収益を稼得することができる無形の財産的価値を有する事実関係」と定義しています。

ですから、営業権を評価するとすれば、これらの超過収益力となる要素があることを金額的に説明・立証できなければなりません。

クリニック(医業)のケースとはなりますが、第三者M&Aの場合において、営業権が評価できるとする見解があるのも事実です。

「成功する事業承継の要点
~(1)個人クリニック編~
選択肢の幅が広い生前承継」
http://www.sekisuihouse.co.jp/medical/doctor/setup/taxlesson59.html

簡単に言えば、「(個人の)医者の手腕ではなく、看護師などのチームが担当して収益をあげている」「明らかにクリニックの立地が有利」などを疎明できるのであれば、営業権として認識できるケースも存在するのです。

営業権を計上したいケースにおいては、認められることがかなり難しいと考え、別の専門家から意見書を書いてもらうなど、説明・立証責任を果たす準備と努力は必要でしょう。

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