KACHIEL(勝ち得る)M&A事務局の高橋です。
中小企業経営者(顧問先)にとって、まだまだ「M&A」というキーワードを、「当事者意識」をもって考えている方は多くないというのが現状です。
その結果、中小企業M&Aは、末期症状(経営悪化)の状態での最終手段として、M&Aのテーブルに上がってくることが多くあり、
「売れない(売りづらい)のに、高く売りたいと思っている」
という状況に陥りやすいのも事実です。
このようなケースの場合、買い手目線の価値(適正価格)とは無関係の、「売り手の必要資金(負の要素)」が成約条件に設定されることにより、M&Aの成約率は一気に下がり、関わるプレイヤーの報酬の捻出も難しいという、負のスパイラルになることが少なくありません。
そして、上記のケースとは真逆の問題として、
「売れるのに、売れないと思っている」
というケースが多いのも事実です。
この場合の問題点は、より良い選択肢として、M&A成約の可能性があったにも関わらず、M&Aの検討もせずに「廃業」をしてしまうことです。
廃業・清算ができるということは、財務状況が良いということになるので、M&Aが成約する可能性は大いにあると言えます。
更に、もともと廃業を予定していたということは、清算後の手残り資金で「満足」できる状況(気持ち)であり、M&A成約の場合は、その何倍もの資金が得られることから、円滑に進むことが容易に想像できます。
※下記1)~2)参照
1)廃業の場合
資産の売却:換金価値(処分価格)
⇒債務の返済
⇒法人税約40%
2)M&Aの場合
株式の売却:資産+のれん(将来価値)
⇒債務の引き継ぎ
⇒株式譲渡益に対して税金約20%
当然、廃業予定だった企業がM&A成約した場合は、
・雇用の継続
・取引先の継続
ができることも大きなメリットになりますが、M&Aに関わるプレイヤーにとっても、大きなビジネス価値を見い出すことができます。
一般的にM&Aはディールの大小に関わらず、やるべき工数は大差がないため、取引額に応じた報酬を受け取るM&Aプレイヤーとしては、大きな案件を優先せざるを得ない実態があるわけです。
また、最低報酬額を1000万円以上と設定していることも多く見受けられます。
それでは、5000万円以下等のM&A案件は、進めることが難しいのか?というと、そうではありません。
某銀行グループのM&A事業会社で、高齢と後継者不在により廃業を予定していた、地方の小さな電気工事会社のM&A売却を、4000万円で成約した事例があります。
実際の担当者から詳細を聞いたところによると、M&A報酬は1000万円でしたが、売り手経営者は大変満足して感謝されたとのことでした。
この背景には、もともと予定していた廃業での手残り予測は、税引き後約900万円程度で、売り手経営者は、「地域のために無償譲渡でも良いから事業を継続したい」との要望でした。
結果、4000万円でのM&A成約により、望んでいた事業の継続はもちろんの事、M&A報酬1000万円を支払っても、税引き後で約2400万円の資金が得られたので、大満足で感謝されるのも当然と言えるでしょう。
このような、三方良しのM&Aの可能性があるにも関わらず、
「売れるのに、売れないと思っている」
ということから、毎年2万件を超える企業が、M&Aを検討することなく廃業している事実があります。
顧問先に後継者不在問題などで、廃業を予定している企業がある場合は、M&Aの可能性を検討することが重要です。