KACHIEL(勝ち得る)M&A事務局です。
前回は、中小企業M&Aに多いケースとして、
「売れない(売りづらい)のに、高く売りたいと思っている」
ということによる負のスパイラルと、
「売れるのに、売れないと思っている」
ということによる廃業の問題について解説しましたが、今回は、上記の問題の原因ともいえる、M&Aの間違ったイメージ・認識について解説します。
「M&Aを検討しようと思う」
と言うことを躊躇する経営者は少なくありません。
そして同様に、身近な第三者は、
「M&Aを検討しませんか?」
とは、言いづらいと感じていることも多々あります。
なぜ、そのように思うのでしょうか?
大きな原因としては、M&Aに対しての「負のイメージ」が、根拠なく蔓延していることになります。
その理由の多くは、前回解説した、末期症状(経営悪化)の状態での最終手段としてM&Aのテーブルに上がってくる事例の負のイメージや、「乗っ取り」「身売り」「ハゲタカ」といった、メディアで取り上げる「言葉」の負のイメージが、影響を及ぼしていると言えるでしょう。
そして、その影響も背景にある中で、健全に運営されてきた事業に対して、
「M&Aはうちには関係ない」
「M&Aをするつもりはない」
と考える中小企業の経営者は少なくはなく、結果、「M&Aを検討しない廃業」という選択を行っているのです。
しかし、この選択は従業員の雇用、取引先、地域の事業が失われ、更には経営者のリタイア後の資金確保の可能性も失われるという、最も「負(マイナス)」の結末(出口)であることが、まぎれもない事実なのです。
そして、事業を継続するという「正(プラス)」の目的に対して、後継者がいないという大多数の問題を解決できるのは、
「M&Aをする以外の選択肢は無い」
ということも、まぎれもない事実です。
だからこそ、根拠のない間違った「負のイメージ」を払拭して、全ての経営者にとって「M&Aを検討する」という事は、健全であたりまえのことであるという事実を、再認識することが重要となります。
また、実際にM&Aを進めている状況においても、経営者や関わっているプレイヤーが、間違った「負のイメージ」を持っていることで、従業員や取引先に「余計な不安」や、「モチベーションの低下」を招いてしまうケースもあります。
M&Aを進めるにあたり、時期によっては、当然に機密性が重視されるのも確かです。
しかし、間違った負のイメージによる、「心配」や「負い目」を発端とする、「必要以上に秘密裏に進める」という場合は、まわりに不穏な空気を感じさせてしまい、「余計な不安」や「モチベーションの低下」を招きます。
従業員や取引先にとっては、事業の継続と発展が、安心とモチベーションに繋がるので、現実的な事業の継続と発展を考えた上でのM&Aは、本来は公然と行えることが健全といえます。
弊社で実際に関わった案件で、ファンドがM&A買収を行い、売り手として引継ぎ先を探している案件がありました。
売り手のファンドは、M&A買収した対象企業の従業員や取引先へ、より良い引継ぎ先にM&Aすることを明確に伝え、その上で事業を発展させる動きを公然と行い、結果、従業員と取引先のモチベーションも上がり、実際の業績も上げたことで、次の引継ぎ先へのM&Aも成約しました。
上記のような事例を、経営者の立場で実践するためには、M&Aに対するイメージと事実を見直し、あたりまえの健全な選択肢として、より早い段階で検討・準備することが重要と言えます。
次回は、M&Aの検討・準備の具体的な動き方として、「企業の磨き上げ」について解説します。