M&Aにおける競業避止義務には注意

M&Aにおける競業避止義務には注意

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

M&Aを実行するにあたり、売る側・買う側
ともに気を付けるべきポイントとして「競業避止義務」が挙げられます。

まず全体的にいうと、買う側は売る側に競業避止義務を強く義務付けておかなければ、
せっかく買った会社・事業のジャマをされてしまうリスクを抱えることになります。

一方で、売り手も競業避止義務に注意しなければならない場合があり、
同じ代表者が似たような事業や、事業内容は違っても
同じ顧客を相手にビジネスをしているケースです。

売り手側の経営者(=株主)が、複数社経営している場合は、
いつの間にか競業避止義務違反を犯しているケースも散見されますので、注意が必要になります。

さて、M&Aが関連する法律的には、事業譲渡において競業避止義務が定められています。

会社法21条で競業避止義務が規定されていて、
譲渡企業は、仮に譲受企業と競業避止義務に関しての取り決めがない場合であっても、
同一の市町村と隣接する市町村の区域内では、
20年間同一事業を行ってはいけないという競業避止義務を負うことになります
(特約を設けることで、最長30年まで延長することが可能です)。

通常は、事業譲渡の場合であっても、
契約書には「地域に限らず」競業避止義務を設定することが多いです。

また、事業譲渡の手法をとらない、たとえば株式譲渡などの場合であっても、
一般的に契約書には競業避止義務を定めます。

買い手側に立って考えれば当然のことですが、
売り手はもともと、売却した事業にノウハウや人脈があるわけですから、
同様の事業をされてしまうと、買収した価値が減ずるリスクがあるわけです。

しかし・・・株式売却などをしてその会社から正式に退社した経営者には、
憲法上「職業選択の自由」が認められており、
競業避止義務を無条件に課す・制限することは法律上難しいのも事実です。

このため、事業譲渡以外の場合には、
競業避止義務の効力が発生する期間を2~3年に設定することが多いです。

それ以上の期間設定をすると、売り手が納得しないこともあり、
また法律上合理的な理由・根拠を求められ、
契約(競業避止義務に関する定め)自体が無効となるリスクがあるからです。

また、話が戻りますが、売り手が他に似た事業を行っている場合、
競業避止義務を守れないとして契約書に盛り込まないケースもあり、
これは買い手側との協議・折り合いにより決まることになります。

似たような話として、売却側の経営者が「利益相反」になるケースもありますが、
これについては次回、別途解説したいと思います。

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