税理士事務所のM&Aにおける注意点・盲点(3)

税理士事務所のM&Aにおける注意点・盲点(3)

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

今回は「税理士法人の出口」について解説します。

税理士の皆さんに言うのもなんですが・・・
税理士法人なるものが何なのか理解していないがために、税理士法人において相続・脱退・解散になった場合の課税関係・リスクを把握していない方が多いです。

まず、税理士法人のM&Aを考える前に、税理士法人とは何か?持分評価はどうなるのか?
について、前提となる知識を解説します。

「税理士法人は、社員を税理士に限定した、商法上の合名会社に準ずる特別法人」

になります。一言でいうと「みなし合名会社」です。

「税理士法人について」
https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishiseido/kentoukai/04.htm

ですから、税理士法人の税務上の株価(持分評価)は【純資産価額】によってのみ算定されます。

一般的な株式会社の株価評価における「類似業種」などは一切使うことができません。

M&Aから話は逸れますが、本来法人は継続性の問題から内部留保することが経営上大事になるわけですが、こと税理士法人に限っては上記の前提から内部留保することで、相続や脱退社員が発生したときのリスクになります。

役員報酬をある程度多めに設定し、普段から純資産額が積みあがらないように経営しなければならないといえるでしょう。

純資産価額で評価されることは、日本税理士会連合会のサイトにも記載があります。

「税理士法人の手引」
http://www.kzei.or.jp/documents/manual/zeirishihoujintebiki120529.pdf

の26ページ最終行から27ページ冒頭分を引用してみましょう。

「税理士法人の社員は、止むを得ない事由があるときにはいつでも脱退することができます。また、税理士法上は法定脱退が定められています(法第 48 条の 17)。
いずれの場合も、その社員の請求により出資持分を払い戻すことになります(法第 48条の 21 第1項による会社法第 611 条の準用。以下この項において同じ)。
出資持分を払い戻す際、定款に別段の定めがない場合は、出資割合に応じた退社時の持分の計算で純資産価額の評価に基づいて行います。また、もし債務超過になっている
場合は、持分に応じた債務超過額相当額の補填をしなければなりません(会社法第 612 条)。
出資持分の払い戻しについて、出資割合に応じない旨を定款に定めることは会社法上問題ありませんが、税務上の問題は生じる可能性があると考えられます。
出資の減少の登記は不要ですので、税務官公署への届出のみが必要となります。さらに、出資の払い戻しがあった場合、払い戻された金銭その他の資産の額が、その脱退する社員の出資の額を超えるときは、その超える部分の金額は、利益の配当又は剰余金の分配とみなされ、配当所得としての課税を受けることに留意する必要があります。」

ここでM&Aを含めて考えると、課税関係はかなり複雑になります。

代表社員のまま持分だけを手放せば、他の持分を保有する者に対するみなし贈与課税が発生することになります。

また株式会社と相違し、自己株式(金庫株)という考え方がありませんので脱退=出資持分を払い戻すには、「持分放棄=みなし贈与」を除くと2つの方法があります。

持分の買取請求

税理士法人に対して持分の買取り請求をする場合、すでに解説した通り、純資産価額によって評価します。

ただし、上記日税連のサイトにもある通り、持分評価額を超えた金銭を受け取ると、その超過分は配当所得として課税があります。

これは、法人側にみなし配当は生じない(自己株式は絡んでいないため)ものの、金銭を受け取る税理士は配当所得として申告する必要が生じます。

他者(税理士のみ)への譲渡(持分売却)

以上から、配当課税が生じない譲渡の形式は、第三者に対する相対による持分譲渡になります。

ですから、税理士法人から脱退する場合のみならず、税理士法人がM&Aでの売却を考えると、「みなし贈与」もしくは「配当課税」が絡んでくる、ということになります。

私も数件の税理士法人の売却、もしくは税理士法人同士の合併を見てきましたが、みなし贈与か配当所得にかかるため、売却価格に比して税引後の手取り額が少額になることから、売却・合併を断念したケースがいくつかありました。

再来週の本メルマガでは、上記を前提として税理士法人のM&Aについて解説します。

なお、税理士法人のみならずですが、士業法人の課税関係について解説したDVDもありますので、参考までに。

~税理士が知らないでは済まされない~
「士業法人の設立・売却・承継・解散における盲点・留意点」
http://kachiel.jp/goods/masscorpblindreme_dvd/

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