• HOME
  •  › ブログ
  •  › 優良会社の社長の役員退職給与が否認された事例
2018.09.12

優良会社の社長の役員退職給与が否認された事例

※2018年2月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

今回は「優良会社の社長の役員退職給与が否認された事例」ですが、

大分地裁(平成21年2月26日)を取り上げます。

多くの会社が事業承継のタイミングを迎えるに当たり、

役員退職給与のことも検討しなければなりません。

これに関しては「最終報酬月額×在任年数×功績倍率」で計算する

功績倍率法が採用されることが多いですが、これが採用される場合、

併せて功労金加算もされることがあります。

また、生命保険会社のホームページなどを見ると、

創業者社長などで功労のあった役員には功労金加算できる旨が

断定的に書いてある場合もあります。

しかし、東京地裁(平成25年3月22日判決)でも示されているとおり、

功労金加算は「極めて特殊な事情がある場合に限って」認められるものです。」

以前にも解説しましたが、功労金は功績倍率に含まれる概念となります。

では、何十年も社長を務めて、

優良企業を作り上げてきた創業者社長の場合はどうでしょうか?

当然、このような社長は世の中に多数存在し、

「極めて特殊」とは言えません。

上記大分地裁の事例でも同様の判断となりました。

法人が支払った役員退職給与、弔慰金は下記のとおりです。

〇退職慰労金:2億6,100万円

・退職慰労金:1億9,950万円

→150万円×38年(本来は37年をかけるべき)×3.5

・功労金:5,985万円、特別功労金:165万円

〇弔慰金900万円

〇合計額:2億7,000万円

これに対し、原処分庁は同業種事業規模類似法人の平均功績倍率が

3.094であり、納税者が採用した3.5と近似値ということで、

納税者主張の率を採用し、更正しました(功労金等は否定)。

なお、最終報酬月額に関しては月額120万円という前提での更正ですが

月額報酬に関する論点は割愛します。

そして、大分地裁の判断は下記です。

〇原告においては、乙の役員退職給与として、

退職慰労金1億9,950万円のほか、功労金5,985万円及び

特別功労金165万円が支給されているにもかかわらず、

功労金等を除外して功績倍率の主張をしている。

〇原告の主張は、功労金等を含めた役員退職給与の支給が適正であること、

すなわち功績倍率4.6(勤続年数37年で算出した退職慰労金及び

功労金等の合計額2億5,417万5,000円を最終報酬月額150万円

及び勤続年数37年で除したもの、小数点以下第2位は四捨五入)が

適正であると主張するに等しいものである。

〇乙は、個人で運送業を始めた数年後に原告を設立した創業者であり、

昭和43年から平成14年の死亡退職に至るまでの間、

代表取締役を務めて原告における営業活動を一手に引き受けていた。

〇原告の利益率は同業種・類似規模の法人の中では突出して高く

(売上総利益率は12比較法人の平均の2倍以上である)、

乙の退職前10年くらいの間は原告に毎年平均して4,500万円程度の

所得を計上させるなど、原告を収益性の高い法人に発展させた。

〇創業者として好業績の法人である原告を維持発展させた乙の功績は

極めて大きいものといえる。

〇功績倍率のうち3.5を超える部分に係る役員退職給与については、

比較法人の平均功績倍率2.3を大きく超えていること、

比較法人の功績倍率の分布状況を見ても、5社中4社は

功績倍率が3.0未満にとどまっており、最高値である4.0は

それら4社と比べて突出して高い。

〇原告及び乙に特有の事情を考慮してもなお、

不相当に高額といわざるを得ない。

ということで、役員退職給与としての税務上の適正額は

「150万円×37年×3.5=1億9,425万円」とされ、

功労金、特別功労金の部分は「全額」が否定されたのでした。

いかがでしょうか?

世の中的に言えば、

「優良企業の創業者社長は功労金加算してもよい」

という「誤解」があります。

繰り返しになりますが、本事案は

〇30年以上に渡り、代表取締役を務めた創業者社長

〇売上総利益率は同業種・類似規模の法人の平均の2倍以上

〇退職前約10年間の法人の所得は平均約4,500万円

〇創業者としての功績は極めて大きいと認めている

という状況です。

それにも関わらず、功労金加算部分は全額が否定されたのです。

いかがでしょうか。

役員退職給与はどの程度であれば否認されないという

確定的な基準はありませんが、「優良企業における否認事例」なので、

しっかり覚えておいてください。

なお、このような事例を網羅的に整理したのが、下記DVDですので、

顧問先さんへの提案にお役立てください。

本メルマガで取り上げた事例も詳細に解説しています。

———————————————————————
「社長の役員退職給与の税務上の限度額はどう考えるのか?」

※下記は単品購入のサイトです。

※提案型税理士塾の会員さんで既にお持ちの方はご購入されないように

 お願いします。

http://mmct.jcity.com/?c=5525&e=Zn%3DL%3DrrydqYA5MgnrzE7SQ11

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

毎週水曜日に配信する『税務調査対策のメールマガジン』では、最新の税務調査事情はもちろんのこと、調査官の心理、税務署のウラ側など元国税調査官だからこそ語れるマニアックなテーマまでをお届けします。
「こんなことまで話して本当に大丈夫ですか?」 と多くの反響を頂く税理士業界では話題のメルマガです。
お名前とメールアドレスを登録するだけで 毎週【 無料 】でメルマガを配信いたします。