• HOME
  •  › ブログ
  •  › 貸倒損失の実務判断(総論)と注意点
2023.11.10

貸倒損失の実務判断(総論)と注意点

※2022年10月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

先週水曜まで7回にわたって「貸倒損失」、
特に取引先の破産と更正の請求について
解説してきましたが、今回が連載最終回となります。

そもそも論でいうと、貸倒損失の計上根拠は
法人税法第22条第3項第3号の「損失の額で
資本等取引以外の取引に係るもの」です。

そのうえで、貸倒損失が上記の「損失」に該当するのか
判断基準が曖昧であることから通達9-6-1~
9-6-3が基準の例示として規定されています。

貸倒損失が「損失」になるかどうかは、

(1)法的に債権が消滅した場合
もしくは
(2)法的には残っているものの実質的に
回収不能である場合

に該当するかどうかで判断するのが本論です。
通達9-6-1は上記(1)の例示であり、
通達9-6-2(および9-6-3)は
上記(2)の例示と考えれば理解しやすいです。

実務上、貸倒損失の計上で難しい問題として
(1)もしくは(2)に該当するのかを主張し、
立証するのは納税者側の責任という点です。

「貸倒損失の立証責任は国税か納税者か?」

特に、上記(2)を主張する場合、
相手方が無資力であることの根拠や、
何度も督促した履歴を残す必要があるのは、
この立証責任の論点があるからです。

また、取引先の破産などを後になって知った
場合など、貸倒損失について当期の損金とするか
更正の請求をするか判断に迷うのであれば、
更正の請求をすべきでしょう。なぜなら、
下記のような【期ズレ時効】が最もリスクだからです。

(Nー3)期における取引先の破産を当期に知った

当期=N期の貸倒損失として損金処理

3年後である(N+3)期に税務調査が入った

N期の貸倒損失が(Nー3)期の計上として
期ズレで否認された

(Nー3)期は6期前であり税務上時効(永久差異)

今月2日に配信した「破産を事由とした貸倒損失の
更正の請求をする場合の注意点」でも書きましたが、
結果として、更正の請求が通らなかった場合
=「更正をすべき理由がない旨の通知」を受けた場合
であっても、不服申立てをせずに、当期に
債権放棄(債務免除)するなど、貸倒損失として
計上処理できる可能性があります。

このようなケースでは、更正の請求をする
リスクやデメリットがなく、むしろ更正の請求を
しなかったために時効=貸倒損失が永久に
損金にならないという大きなリスクが生じます。

5年以内の期ズレであれば修正申告+減額更正
によって加算税部分だけがリスク(損失)ですが、
5年超となってしまうと「貸倒損失で更正の請求を
しなかった(間違った判断で当期処理をした)」
税理士事務所の責任=税賠リスクは多額になります。

最後の論点となりますが、取引先に対する
売掛金等が滞留した際に、分割払いなど許容する
代わりとして、個人の(連帯)保証人を入れて
もらうことが実務上よくあります。

このようなケースで、その後に取引先が破産したが
(連帯)保証人がいる以上は、貸倒損失が
計上できない(通達9-6-2の適用がない)
と勘違いしている場合が多いです。

下記、国税庁の質疑応答事例に明記されている通り、

「保証人がいる場合の貸倒れ」

「No.5320 貸倒損失として処理できる場合
(連帯保証人がいる場合の貸倒れの判断)」

(連帯)保証人が無資力であるなど、実質的に
回収が不可能の場合、貸倒損失は計上できます。
「(連帯)保証人がいる=貸倒損失は計上できない」
というわけではありませんので、注意が必要です。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

毎週水曜日に配信する『税務調査対策のメールマガジン』では、最新の税務調査事情はもちろんのこと、調査官の心理、税務署のウラ側など元国税調査官だからこそ語れるマニアックなテーマまでをお届けします。
「こんなことまで話して本当に大丈夫ですか?」 と多くの反響を頂く税理士業界では話題のメルマガです。
お名前とメールアドレスを登録するだけで 毎週【 無料 】でメルマガを配信いたします。