• HOME
  •  › ブログ
  •  › 調査官が指摘する更正の請求の取下げに応じないことが大事
2022.11.18

調査官が指摘する更正の請求の取下げに応じないことが大事

※2021年12月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

今回は、更正の請求をきっかけとして税務調査に
入られた際、調査官から「更正の請求を取下げてください」
と言われた場合の対応について解説します。

なお、同じような内容を今年4月14日の本メルマガ
「税務署が要請する取下げに応じる実益はない」
でも解説しましたが、質問・相談が多く、
かつ重要な論点なので実例を含めて解説します。

まず、先日実際にあった質問・相談を紹介します
(なお、前提事実はあえて改変しています)。

【実例】

・債権がある取引先の破産を直近で知った

・基本通達9-6-1を根拠に更正の請求をした

・税務調査に入られ、調査官から「9-6-1には
破産が含まれていないことから更正の請求を
取下げてください」と指摘された

・調査官は「9-6-2から当期(進行期)の損金
として計上してください」としている

・ただし、顧問税理士としては調査官の指摘
については懐疑的に考えている

さて、このように更正の請求を機として
調査が入った事案においては、更正の請求の
取下げを要請されることがあるわけですが、
どのような判断・行動をすべきでしょうか。

ここでお伝えしたいのは、更正の請求の内容が
明らかに間違っていると判断したとき以外は
取下げをしない方がいい、ということです。

本来の手続きとして、更正の請求が法的に
通らないのであれば、税務署は
「更正をすべき理由がない旨の通知」をし、
納税者としてはその処分(却下)に対して
不服申立てするかどうかを判断すればいいのです。

上記の実例でいえば、

●更正の請求を取下げ(撤回)した

●後になって9-6-2の処理が認められない

●かつ9-6-1の更正の請求の期限を徒過した
(取下げすれば当初の更正の請求は無効)

となれば、納税者に不利益しかありません。

もう少し深く考えると、「更正の請求が通るか
通らないかわからない段階で当期の申告期限を
迎える場合はどうするのか」と聞かれそうですが、
その場合は、

・更正の請求を取下げしない(まま)

・当期の申告で9-6-2を根拠に損金算入

・更正の請求が認められれば当期分を修正申告

・更正の請求が通らなければ不服申立てをするか、
9-6-2を根拠にした損金処理で通すかを選択

とすればいいわけです。

ここで最悪のシナリオは「更正の請求を取下げし、
かつ9-6-2が認められない」ケースですから、
調査官の指摘に沿わない方がいいわけです。

私が上記で伝えていることは、調査官の
個人的な見解を信じる必要性はなく、
税務署の公式見解を待てばいい、ということに
等しいので、むしろシンプルな判断です。

調査官の個人的な判断を信じたところで、
それが間違っていても救済されるのは
誤指導による加算税くらいのもので、
本税部分は永久に取り返せない可能性があります。

特に更正の請求の取下げは、自ら撤回をして
当初から更正の請求をしなかったことと
同じ効果になりますから、ぜひ注意してください。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

毎週水曜日に配信する『税務調査対策のメールマガジン』では、最新の税務調査事情はもちろんのこと、調査官の心理、税務署のウラ側など元国税調査官だからこそ語れるマニアックなテーマまでをお届けします。
「こんなことまで話して本当に大丈夫ですか?」 と多くの反響を頂く税理士業界では話題のメルマガです。
お名前とメールアドレスを登録するだけで 毎週【 無料 】でメルマガを配信いたします。