• HOME
  •  › ブログ
  •  › 通達9-6-2を根拠とした更正の請求は本当にできないのか?
2023.11.03

通達9-6-2を根拠とした更正の請求は本当にできないのか?

※2022年10月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

先週水曜の本メルマガから引続き、貸倒損失
にかかる更正の請求を取り上げますが、
今回は通達9-6-2を根拠とした場合です。

なお、今回はかなり学術的な内容となりますが、
最終的には実務的な論点も含めて解説します。

まず、理解している方がほとんどかと思いますが、
通達9-6-3(形式上の貸倒れ)を根拠とした
貸倒損失の更正の請求をすることはできません。
これは同通達において「貸倒れとして損金経理をした
ときは、これを認める。」と明記しているからです。

一方で、通達9-6-2(事実上の貸倒れ)も同様に
損金経理要件あり、として更正の請求ができないと
理解している方が多いように思いますが、本通達では
【貸倒れとして損金経理をすることができる】
として、9-6-3と規定文言が相違しています。

この「貸倒れとして損金経理をすることができる」
という表現は解釈が難しく、

●損金経理をした場合に限り損金の額に算入する
ことができる=更正の請求はできない

●損金経理をしなくても損金の額に算入する
ことができる=更正の請求をすることができる

このどちらかなのか判然とはしません。

税務署職員の多くが参考にしている
「図解法人税法 令和3年版」(上竹良彦編集
大蔵財務協会)361ページにおいては、
9-6-2は「損金経理処理」と図示されており
前者の理解をしているものと考えられます。

一方で、後者の理解を明確に表明する専門家も
多くいます。その筆頭が山本守之先生でしょう。

「法人税基本通達9-6-2については、
解説書等に損金経理を要すると書かれているが、
これは誤りである」(「事例から考える租税法
解釈のあり方」山本守之著/中央経済社)
としていますし、同著者「法人税の理論と実務」
(中央経済社)でも

「法人税法基本通達9-6-2の適用に関して
損金経理を絶対要件とすることはできないが、
法人が損金経理をしていないときは、債権者が
貸倒という事実を認識していなかったと推定される
のです。逆に言えば、損金経理していないという
事実だけで貸倒を否認できないが、この場合に
貸倒の挙証責任は納税者側にあり、(中略)
回収不能の立証に厳格さが要求されることは
覚悟しなければならないということです。」

と記述しています。他にも同様に「貸倒引当金
制度廃止後の不良債権処理の実務 要点解説」
(中村慈美著)や「法人税法解釈の検証と実践的展開
第I巻(改訂増補版)」(大渕博義著)など、
著名な実務家・租税法学者が、損金経理を
しなくても損金の額に算入することができる
という見解を明示しています。

なお、この考え方の背景には、通達9-6-2は
もともと「損金経理をした場合には、これを認める」
という規定であったものが、昭和55年度改正により
「損金経理をすることができる」という
規程文言に改定・変更されたという事実があります。

9-6-2も以前は(9-6-3と同様に)損金経理
を明示していたものが、規定文言が改定された
ということは、損金経理要件がなくなったと
捉えることがむしろ自然な理解とも言えます。

実際に東京地裁平成元年7月24日の判決でも、
「法人の有する金銭債権が回収不能(貸倒損失)
として損金算入が認められる場合、その債権の
回収不能が明らかになった事業年度において
貸倒れとして損金経理を要するという
実定法上の根拠はない」としており、
9-6-3はともかく、9-6-2の適用がある
(実質的に)債権が回収不能の場合であれば、
損金経理は不要=更正の請求が可能とも
判決文から理解することができます。

最後になりますが、実務上は9-6-2を
根拠とした更正の請求はしない方が無難です。
ご存じのとおり、税務署は頭ごなしに
9-6-2の更正の請求を否定するからです。

もちろん、上記のとおり学術上も9-6-2の
更正の請求を支持する見解があることから、
更正の請求をすることを否定はしませんが、
通達の適用・解釈論で争うことはかなり煩雑で、
また不服申立て・裁判までいくことを覚悟できる
(貸倒が多額、資金繰りの観点から等)
のであれば、更正の請求をする意味はあるでしょう。

9-6-2による更正の請求をする場合、
9-6-2で更正の請求ができると明示する
書籍のコピーを添付すべきでしょう。

ここまで、7回にわたって取引先の破産など
貸倒損失について解説してきましたが、
来週水曜の本メルマガは連載の最終回として、
「概要・まとめ」とここまで取り上げなかった
「実務上の論点」で締めくくりたいと思います。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

毎週水曜日に配信する『税務調査対策のメールマガジン』では、最新の税務調査事情はもちろんのこと、調査官の心理、税務署のウラ側など元国税調査官だからこそ語れるマニアックなテーマまでをお届けします。
「こんなことまで話して本当に大丈夫ですか?」 と多くの反響を頂く税理士業界では話題のメルマガです。
お名前とメールアドレスを登録するだけで 毎週【 無料 】でメルマガを配信いたします。