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2018.10.31

現金売上が漏れたら、重加算税なのか?

※2018年3月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

日本中央税理士法人の見田村元宣です。

今回は「現金売上が漏れたら、重加算税なのか?」ですが、

平成17年1月11日の裁決を取り上げます。

さて、皆さんは税務調査において、

「現金売上」の計上もれの指摘をされて重加算税とも指摘を受けた時、

どのように反論していますか?

例えば、

○領収書の控えの「一部」に売上計上もれがあった

○入金帳などには記載があるが、その一部が総勘定元帳に記載もれ

というケースがあります。

この場合、重加算税との指摘を受けることがあります。

このような指摘を受けた際の反論の参考となる裁決が

本裁決です。

この裁決の概要は下記となっています。

○請求人が事務所の窓口で受領した売上代金等については請求人の従業員が

 本件入金帳に記載しており、本件売上げについても、本件入金帳の

「年月日」欄に「平成13年10月22日」、「科目」欄に「■■■■」、

「摘要」欄に「登記業務」、収入金額」欄に「500,000・現金」と

記載がある。

○請求人は本件入金帳を基に入金(売上)伝票を作成し、総勘定元帳に

記帳していたが、本件売上げに係る入金(売上)伝票は作成されていない。

○請求人の経理担当者である■■■■■は、当審判所に対し、本件売上げに

係る入金(売上)伝票が作成されなかった理由は事務処理ミスからであり、

故意に作成しなかったものではなく、調査担当職員にその旨を説明したが

理解してもらえず、調査担当職員に「故意に除外したのではないか。」と

言われた旨答述している。

○本件売上げの代金が請求人に入金された後、その現金の行方は不明である。

○請求人の取締役は「小遣い程度の金額なので使ってしまったかもしれない」

と申述した

この前提の下、国税不服審判所は下記と判断しました。

○原処分庁は、請求人が本件売上げの代金を現金で受領しているにも

かかわらず益金の額に算入しなかったこと及び■■■■が調査担当職員に

対して「小遣い程度の金額なので使ってしまったかもしれない」と申述した

ことなどをもって、通則法第68条第1項の規定に該当する旨主張する。

○ところで、通則法第68条第1項に規定する「隠ぺい」とは、納税者が

その意思に基づいて、課税標準等の計算の基礎となる特定の事実を隠匿し

あるいは故意に脱漏することをいうものと解されている。

○これを本件についてみると、請求人は本件売上げに係る入金の事実を

本件入金帳に記録したものの、本件売上げに係る入金(売上)伝票は起票

されておらず、総勘定元帳にもその記録はなく、本件売上げに係る代金の

行き先は不明である。

○このように、本件売上げが請求人の所得金額の計算上益金の額に算入

されることなく申告漏れとなった理由については、請求人の経理担当者の

答述からすると、請求人の事務処理上のミスからであることも否定できず、

請求人が積極的に本件売上げを所得金額から除外したと認定できる事実は

認められない。

○そうすると、通則法第68条第1項に規定する「隠ぺい」の事実は

認められず、また、同項に規定する「仮装」の事実も認められない。

いかがでしょうか?

重加算税を定めた国通法68条に規定する「隠ぺい」、「仮装」という

行為は「故意に」行なわれることが前提です。

そして、この立証責任は国税側に課されているものです。

当然ですが、現金売上の計上もれを指摘されるということは、

「これを記載した何らかの書類」が残っているからです。

当然、この書類には適正に計上されている売上の記載があります。

売上を脱漏しようという人が適正に作成した書類等を作成しますか?

二重帳簿が見つかった場合はともかくとして、

自らそれを調査官に見せますか?

当然、見せる訳がありません。

もし、売上を除外しようと思うなら、領収書を別に切る、

入金帳には記載しないなどの行動をとるでしょう。

しかし、そういう行為が無い訳ですから、その現金売上の計上もれは

「事務処理上のミス」であり、「隠ぺい」でも「仮装」でもないのです。

調査官が現金売上の計上もれを指摘できたということは、

これを記載した何らかの書類が残っているということです。

ということは、「その書類がある=重加算税ではない」ということなのです。

実は、冒頭に記載した、

○領収書の控えの「一部」に売上計上もれがあった

○入金帳などには記載はあるが、その一部が総勘定元帳から漏れた

というのは、私に税理士から相談があった事案です。

私は「上記裁決を提示し、このメルマガに書いた考え方をベースに反論

してください」と伝えました。

そうしたら、「あっさり」重加算税は引っ込んだそうです。

調査官は「適正な根拠」が無いままに「重加算税だ」と指摘していたのです。

このように税務調査においては「適正な根拠」を提示し、

「適正な反論」をすることにより、調査官の指摘に対応することができます。

確定申告が終わり、税務調査の季節になりますが、

同様の指摘が日本全国であるものと思われます。

しかし、それは間違っているので、

本メルマガの内容をベースに適正な反論をしていただければと思います。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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