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2017.03.17

漫画家が同族会社に支払った業務委託費の是非

※2016年9月の当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

さて、今回は「漫画家が同族会社に支払った業務委託費の是非」ですが、

平成28年2月15日の裁決を取り上げます(全部取消し)。

この事案は「漫画家である請求人(個人)が事業所得の計算上、

同族会社へ支払った業務委託料を必要経費に算入していたところ、

行為計算の否認により、更正処分を受けたものです。

この同族会社(合同会社)等の概要は下記の通りです。

〇業務執行社員には請求人の両親、妹が就任

〇法人の目的は漫画家、イラストデザイナーなどのマネジメント業務など

〇業務委託契約書の内容は下記

・制作及びその他の事務・経理管理業務一切の代行

・法令で要求される帳簿・書類の整備の一切

・請求人の契約事務の立会・書類の整備

・請求人の知的財産権の保護に関する研究と提案

・業務委託料は月額4,000,000円

この前提で国税不服審判所は下記と判断しました。

〇委託業務の内容に鑑みれば、本件委託契約は業務の包括的な委託契約である

と認められるところ、このような包括的な委託契約が同族会社でなければ

行えないわけではないから、本件委託料の支払が、非同族会社との間における

通常の経済活動としては不合理又は不自然であるか否かの判断に当たっては、

結局、その支払額の多寡が問題となるのであって、当該判断は、非同族会社に

おける通常の委託料(適正委託料)の金額と、本件委託料の金額とを比較して

行うことになる。

〇適正委託料の金額の算定は、本件合同会社と業務内容等の近似する非同族

会社を抽出し、当該非同族会社が本件と同じ内容の業務を受託する場合の

通常の委託料とするのが最も合理的であると考えられる。

〇しかし、本件合同会社のように特定の漫画家(漫画家に限らないとしても)

との間で、本件と同様の業務を一括して受託している非同族会社が、現実に

存在するかについては疑問があり、実際、原処分庁の調査した仙台国税局、

東京国税局及び関東信越国税局管内では把握することができなかったことが

認められる。

〇このように業務内容等の近似する非同族会社が把握できない場合に上記

不合理性等の判断を行わないとすれば、税負担の公平を維持するために

設けられた所得税法第157条の趣旨を没却することになりかねないから、

別の合理的な方法により適正委託料を算定する必要があるというべきである。

〇本件各比準会社と本件合同会社の業務内容には個別条件の相違を超えた

違いがあり、相当な類似性があるとは認められず、比準同業者としての

基礎的要件に欠けるから、原処分庁が採用した本件各比準会社における

人材派遣倍率などに基づく適正委託料の算定方法には、合理性が認められない。

〇また、父のマネジメント業務の適正委託料に関しても、同人の役員給与額を

算定の基礎とした点について、その根拠が不明確であるといわざるを得ず、

合理性があるとは認められない。

〇所得税法第157条の適用に当たっては、株主等の所得税の負担を不当に

減少させる結果となることが要件とされているところ、本件の場合、不当に

減少させる結果となるかどうかは、合理的な方法で算定された適正委託料と

本件委託料の金額を比較することにより判断することとなるのであるが、

本件において原処分庁が主張する方法で抽出された本件各比準会社は、

その業務の内容が本件合同会社の業務の内容と相当な類似性を備えているとは

認められず、また、原処分庁が主張する役員給与の額を基礎とした算定方法

にも合理性が認められないから、本件委託料の支払が請求人の所得税の

負担を不当に減少させる結果となるとする原処分庁の主張を採用することは

できない。

いかがでしょうか?

個人事業主が親族を役員とする同族会社に一定の業務委託料を支払うことは

よくあります。

そして、これが多額であることもあり、税務調査で問題になることも

あります。

しかし、審判所も別の部分で「結局、その支払額の多寡が問題となる

のであって、当該判断は、非同族会社における通常の委託料(適正委託料)の

金額と、本件委託料の金額とを比較して行うことになる」と判断しています。

この適正額の算定が難しい訳ですが、同様の業務を受託している法人が

あまり無いため、金額の算定に頭を悩ますこともあります。

こういう場合、何らかの合理的な基準をベースに算定することになりますが、

もし、これが税務調査で問題になったら、本裁決の考え方を提示し、

交渉することも1つの方法と考えます。

 

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