• HOME
  •  › ブログ
  •  › 質問検査権の要件・範囲を理解する(提示提出・留置きの範囲)
2022.07.08

質問検査権の要件・範囲を理解する(提示提出・留置きの範囲)

※2021年7月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

毎週金曜の本メルマガでは、税務調査を体系的に理解する
内容を連載で解説していますが、前回から引続き
質問検査権の範囲で、今回は「提示・提出・留置きの
対象範囲」について取り上げます。

先週のメルマガでは、「提示・提出」と「留置き」の違い
について解説しましたが、留置きとは帳簿や原資資料など
税務署にいったん持ち帰っても、その返還を予定している
ことが前提になります。

では、税務調査において帳簿・資料などをコピーした
写しを、調査官が税務署に持ち帰ることは
具体的にどのような権限なのでしょうか。

まず、前回も取り上げた通達の但し書きを確認します。

国税通則法調査関連通達2-1(1)
(「留置き」の意義等)
ただし、提出される物件が、調査の過程で当該職員に
提出するために納税義務者等が新たに作成した物件
(提出するために新たに作成した写しを含む。)である
場合は、当該物件の占有を継続することは法第74条の7
に規定する「留置き」には当たらないことに留意する。

ここから、コピーした写しを留置きに当たらないことが
わかります。写しは返還を要しないからです。
ですから、調査官に写しを渡すのは提出に該当します。

これを前提として、質疑応答事例には下記とあります。

税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)
問4 提出される物件が、調査の過程で調査担当者に
提出するために新たに作成された写しである場合には、
留置きには当たらないとのことですが、自己の事業の
用に供するために調査前から所有している物件が
写しである場合(取引書類の写しなど)であっても、
留置きには当たらないのでしょうか。
(答)
調査の過程で調査担当者に提出するために新たに
作成した帳簿書類等の写し(コピー)の提出を受けても
留置きには当たらないこととしているのは、通常、
そのような写し(コピー)は返還を予定しないものである
ためです。他方、納税者の方が事業の用に供するために
保有している帳簿書類等の写し(コピー)をお預かりする
場合は、返還を予定しないものとは言えませんから、
留置きの手続によりお預かりすることとなります。

以上から結論としては、帳簿の持ち帰り(留置き)は
断れるものの、「では必要部分のコピーを持ち帰ります」
という調査官の要請は断ることができません。

また、似たような論点として会計データがあります。
昨今はコロナ禍なので、「会計データをください」
という調査官からの要請が増えています。

会計データについては、そもそも質問検査権の対象物
に該当しないので提示・提出する必要はありません
(電子帳簿保存法の適用がある場合を除く)。

「帳簿書類の保存方法は、紙による保存が原則」
ですから、税務調査において提示・提出義務があるのは、
あくまでも帳簿書類という「紙」であって、
会計データは対象外という理解です。

ここまで質問検査権の要件とその範囲を掘り下げて
解説してきましたが、全体をきちんと理解しなければ
税務調査の現場で適切な対応はできません。

提示・提出と留置きの違いなど細かい論点も多いですが、
ぜひ質問検査権の全体を理解してください。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

毎週水曜日に配信する『税務調査対策のメールマガジン』では、最新の税務調査事情はもちろんのこと、調査官の心理、税務署のウラ側など元国税調査官だからこそ語れるマニアックなテーマまでをお届けします。
「こんなことまで話して本当に大丈夫ですか?」 と多くの反響を頂く税理士業界では話題のメルマガです。
お名前とメールアドレスを登録するだけで 毎週【 無料 】でメルマガを配信いたします。