• HOME
  •  › ブログ
  •  › 貸倒損失:後になって破産手続終結を知った場合
2021.10.26

貸倒損失:後になって破産手続終結を知った場合

※2020年6月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

先週は通達9-6-1「法律上の貸倒れ」
について解説しましたが、今回は本通達を
適用するにあたり、相手方(債務者)が
破産手続等を終結したことを遅れて知った
場合の実務的な対応について解説します。

なお、9-6-1の適用範囲については
先週解説したとおり、「倒産法」全般に
適用があるわけですが、今回は実務上
最も多い「破産法」のみ取り上げます。

法律上の貸倒れに該当する場合において、
税務実務上よくあるケースとして、
「債務者の破産手続終結を知らなかった」
「後になって知った」ということがあります。

具体的には、破産手続に入っていたことは
破産管財人等からの連絡で知ってはいたが、

・破産手続が終結すれば管財人や弁護士
から連絡があるものと思っていた

・破産手続終結に関する通知を見ていない
(もしくは、通知が届いていない)

などの理由・事情が考えられます。

破産に関する貸倒損失の計上時期は
「破産手続終結の決定の日」と明確なので、
後になって知ったからといって、
知った事業年度の貸倒損失にはなりません。

破産手続終結がいつなのか知りたい場合は、
登記簿謄本(閉鎖登記)もしくは官報を
調べる必要があります。

また、後になって相手方の破産手続終結を
知ったとしても、5年以内であれば
更正の請求をすることができます。

債権が存在した状況から、法的に債権が
なくなった状況になったわけですから、
法人税法第22条の適用から、損失計上
できる(できた)ことは明らかです。

さらには、法人税法基本通達9-6-1
には「その事実の発生した日の属する
事業年度において貸倒れとして損金の額に
算入する」とありますから、貸倒損失は
損金経理要件ではないことから、
更正の請求をすることは可能なのです。

ただし、5年超(更正の請求の期間徒過)
している場合は、損金にはなりませんので、
残念ながらあきらめるしかありません。

ですから、税理士・会計事務所の実務としては
顧問先に長期滞留債権があり、
内容を確認したところ「破産手続きに入った
(らしい)」という情報があれば、
登記簿謄本(もしくは官報)で
破産手続終結の日を確認することです。

「法律上の貸倒れ」は外形要件を満たせば
確実に貸倒損失として計上できる一方で、
計上時期は一切の融通が利かないので
十分に注意する必要があります。

来週のメルマガでは、「法律上の貸倒れ」
について流れと計上時期を一覧で示し、
またそれらに関する注意点を解説します。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

毎週水曜日に配信する『税務調査対策のメールマガジン』では、最新の税務調査事情はもちろんのこと、調査官の心理、税務署のウラ側など元国税調査官だからこそ語れるマニアックなテーマまでをお届けします。
「こんなことまで話して本当に大丈夫ですか?」 と多くの反響を頂く税理士業界では話題のメルマガです。
お名前とメールアドレスを登録するだけで 毎週【 無料 】でメルマガを配信いたします。