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2016.01.20

どういう場合に重加算税が課せられるのか?

こんにちは。日本中央税理士法人の見田村元宣です。

さて、今回は「どういう場合に重加算税が課せられるのか?」です。

最近、税理士の方から重加算税に関するご相談が2件ありました。

2件とも「売上計上もれ」という「ミス」に対して、重加算税との指摘を

受けているものですが、あくまでも重加算税は「隠ぺい」や「仮装」がある

場合に課せられるもので、「ミス」に対しては課せられません。

ここを掘り下げてみたいと思います。

まず、「隠ぺい」、「仮装」の定義につき、 過去の判決ではどのように

なっているのでしょうか?

〇 和歌山地裁(昭和50年6月23日)

国税通則法68条1項に規定する「‥‥の計算の基礎となるべき事実の全部

又は一部を隠ペいし、又は仮装し」たとは、不正手段による租税徴収権の

侵害行為を意味し、「事実を隠ペい」するとは、事実を隠匿しあるいは脱漏

することを、「事実を仮装」するとは、所得.財産あるいは取引上の名義を

装う等事実を歪曲することをいい」いずれも行為の意味を認識しながら

故意に行うことを要するものと解すべきである。

「いずれも行為の意味を認識しながら【故意に】行うことを要する」と

判示されていることがポイントです。

〇 名古屋地裁(昭和55年10月13日) 

国税通則法68条は、不正手段による租税徴収権の侵害行為に対し、制裁を

課することを定めた規定であり、同条にいう「事実を隠ぺいする」とは、

課税標準等又は税額の計算の基礎となる事実について、これを隠ぺいし

あるいは故意に脱漏することをいい、また「事実を仮装する」とは、

所得財産あるいは取引上の名義等に関し、あたかも、それが真実であるかの

ように装う等、故意に事実を歪曲することをいうと解するのが相当である。

ここでも「故意に」という言葉が使われています。

〇最高裁(平成6年11月22日)

納税者は、正確な所得金額を把握し得る会計帳簿を作成していながら、

3年間にわたり極めてわずかな所得金額のみを作為的に記載した申告書を

提出し続け、しかも、その後の税務調査に際しても過少の店舗数を記載した

内容虚偽の資料を提出するなどの対応をして、真実の所得金額を隠ぺいする

態度、行動をできる限り貫こうとしているのであつて、申告当初から、真実

の所得金額を隠ぺいする意図を有していたことはもちろん、税務調査が

あれば、更に隠ぺいのための具体的工作を行うことをも予定していたことも

明らかといわざるを得ない。

以上のような事情からすると、納税者は、単に真実の所得金額よりも少ない

所得金額を記載した確定申告書であることを認識しながらこれを提出したと

いうにとどまらず、本件各確定申告の時点において、白色申告のため当時

帳簿の備付け等につきこれを義務付ける税法上の規定がなく、真実の所得の

調査解明に困難が伴う状況を利用し、真実の所得金額を隠ぺいしようという

確定的な意図の下に、必要に応じ事後的にも隠ぺいのための具体的工作を

行うことも予定しつつ、前記会計帳簿類から明らかに算出し得る所得金額の

大部分を脱漏し、所得金額を殊更過少に記載した内容虚偽の確定申告書を

提出したことが明らかである。

したがつて、本件各確定申告は、単なる過少申告行為にとどまるものではなく、

国税通則法68条1項にいう税額等の計算の基礎となるべき所得の存在を

一部隠ぺいし、その隠ぺいしたところに基づき納税申告書を提出した場合に

当たるというべきである。 

この判決でも「確定的な意図の下に」という言葉が使われ、「会計帳簿類

から明らかに算出し得る所得金額の大部分を脱漏し」と判示されています。

では、これらの考え方を前提に売上の計上漏れが問題になった事例を取り

上げてみましょう(平成17年1月11日裁決)。

この事例は司法書士事務所の事例ですが、認定事実は下記となっています。

〇請求人が事務所の窓口で受領した売上代金等については請求人の従業員が

本件入金帳に記載しており、本件売上げについても、本件入金帳の「年月日」

欄に「平成13年10月22日」、「科目」欄に「■■■■」、「摘要」欄

に「登記業務」、「収入金額」欄に「500,000・現金」と記載がある。

〇請求人は本件入金帳を基に入金(売上)伝票を作成し、総勘定元帳に記帳

していたが、本件売上げに係る入金(売上)伝票は作成されていない。

〇請求人の経理担当者である■■■■■は、当審判所に対し、本件売上げに

係る入金(売上)伝票が作成されなかった理由は事務処理ミスからであり、

故意に作成しなかったものではなく、調査担当職員にその旨を説明したが

理解してもらえず、調査担当職員に「故意に除外したのではないか。」と

言われた旨答述している。

〇本件売上げの代金が請求人に入金された後、その現金の行方は不明である。

そして、国税不服審判所は上記認定事実の経理担当者の「事務処理ミスから

であり、故意に作成しなかったものではなく」という答述から「請求人の

事務処理上のミスからであることも否定できず、請求人が積極的に本件売上げ

を所得金額から除外したと認定できる事実は認められない」として、原処分庁

の重加算税の賦課決定を認めなかったのです。

当然ですが、売上を除外しようとする人が入金帳に適正に記載するという

ことはあり得ない訳です。

本当に売上を除外するならば、そんな根拠資料は残さないでしょう。

しかし、原処分庁はこの状況でも「隠ぺい」と判断し、重加算税を課した

のですが、納税者の主張が認められたのです。

いかがでしょうか?

売上の計上もれが発生した場合でも、その根拠資料(入金帳など)は適正に

記帳されたが、なんらかの「ミス」により、総勘定元帳への記帳が漏れて

しまった、ということはどの会社でもあり得る話です。

だから、売上を記帳した何かしらの資料が残っているケースでは(普通は

何かが必ず残っているはずです)、この裁決を提示し、抗弁書を書き、

反論していきましょう。

繰り返しになりますが、「ミスによる売上計上もれ」と「売上除外」は

全く「レベルの違う行為」なのです。

 

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

※2014年4月の当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

 

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