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2020.09.23

従業員が会社に内密で売却収入を得ていたケース

※2019年4月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

前回に引続き、今回は
従業員が会社に内密で、業務上の
売却収入を得ていたケースについて解説します。

いわゆる従業員不正のケースなのですが、
不正の類型は広範囲にわたるため、今回は
業務用の資材などを売却していたケース
について解説していきます。

税務調査でよく発覚する従業員不正の
ケースをまず取り上げます。私がよく
セミナーなどでも扱う実例です。

スクラップ・廃材などが発生する顧問先では
経営者が把握していない、もしくは
暗に了知しているケースが多いので、
顧問先に対する指導が必要になる論点です。

【実例】

・オフィスの電気・LAN配線などを
敷設する電設工事会社

・依頼者からは工事作業とともに
配線・ケーブルなどの仕入れも併せて受注

・工事完了後に余った資材については
従業員が買取業者に持ち込み売却

・調査官は廃材売却に関する資料せんを
保有している、もしくは一部法人で計上
している売却収入から、売却金が他にも
あることを把握できる状況

このケースでよくあるのは、経営者としては
従業員が廃材の売却金を得たという事実を
知りながらも、「そのお金で従業員達が
飲み代として支出していることから、
損益ゼロ」として放置している場合です。

そうだとすると、法人が計上すべき収入を
故意に計上しなかったわけですから、
その収入計上漏れには重加算税が課され、
かつ飲み代など支出をした事実に関して
証拠を明示できない限り、経営者が言う
「損益ゼロ」を主張するのは難しくなります。

次に、同じケースでも経営者(法人側)が、
従業員が廃材を売却し収入を得ていたという
事実を知らなった場合です。

廃材ではありませんが、法人の貯蔵品を
従業員が売却して金銭を得ていた
公開裁決事例が存在します。

この事例では、重加算税を争ったものでなく
そもそも所得の帰属が法人なのか、
従業員個人なのかという論点です。

「請求人の従業員が貯蔵品を売却したこと
による収益は、取引を行った従業員の
地位・権限などを総合考慮すれば、
請求人の売上げとはいえないことから、
請求人には帰属しないとした事例」
(平成21年9月9日公開裁決事例)
http://www.kfs.go.jp/service/JP/78/20/index.html

本裁決事例の結論は従業員個人の所得と
認定されたわけですが、その判断基準は
下記の4つとされています。

(1)当事者が経営に従事する者ではなかった

(2)取引名義が実在しない名義であった
(法人の名義ではなかった)

(3)法人が印刷用紙を販売した過去はない
(印刷して販売するための貯蔵品)

(4)売却先も法人取引と認識していない

話を戻すと、廃材であったとしてもその資材を
購入したのは法人であることから、
その売却収入は法人に帰属するのが原則です。

一方で、すべてのケースにおいて
従業員不正が法人の所得に帰属するもの
でもなく、上記裁決事例のように、
悪意ある従業員が勝手に行った不正行為は
従業員個人の所得と主張できる場合もあります。

上記裁決事例も考慮し、あえて
ザックリ言い換えると

「法人が不要だと認識していたものを、
勝手に従業員が売買したものまで、
法人の所得に帰属するわけがない」

ということです。

次回はさらに、
代表者以外が行った不正や(隠れた)取引
について解説します。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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