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2023.03.17

遺留分侵害額請求に関する法務と税務

※2022年3月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

税理士法人レディングの木下でございます。

今回のメルマガは・・・
前回に引き続き改正民法を取り上げます。

テーマは「遺留分侵害額請求に関する法務と税務」です。

国民の権利意識が高くなってきており
税理士実務でも遺留分実務は必須になると考えております。

1.民法規定の概要

(1)改正前民法
ご存じのとおり「遺留分減殺請求権」でした。
内容は・・・
「遺留分を侵害された相続人が
遺留分に相当する相続財産を請求する権利」

こちらの権利は「物権的効力」と呼ばれ、
一方的な意思表示により法律効果が発生する形成権であり
改正前民法では、減殺請求の意思表示をすれば、
相続財産に対し、遺留分割合の共有持分を持つ状態でした。

つまり・・・
権利(遺留分減殺請求権)を行使すると
相続財産全てに対して
遺留分割合の共有持分を取得することになります。

そのため・・・
遺言により取得した不動産につき
その所有権の相続登記を入れた場合でも
他の相続人からの遺留分減殺請求権を行使されると
相続登記のやり直しを迫られる可能性がありました。

ただし・・・
実務上は「価額弁償(金銭での支払)」により
処理されることがほとんどであったかと思います。

(2)改正後民法
「遺留分侵害額請求権」へ変更されました。
内容はご存じのとおり「金銭債権」です。

遺留分権利者の権利保護を図るためには
物権的効力まで認める必要がなく、
侵害された権利に対する金銭の支払いで
十分と考えられたためです。

民法第1046条第1項が根拠条文です。
「遺留分権利者及びその承継人は、
受遺者(特定財産承継遺言により
財産を承継し又は相続分の指定を
受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)
又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の
支払を請求することができる。」

これにより、十分な資金さえあれば
事業承継も円滑に運ぶことになります。

裏を返せば、遺留分だけは侵害することができないため、
事前の資金準備が必須とも言えます。

2.民法改正を受けた課税関係の変化
ここでは・・・
遺留分侵害に対する財産移転として
含み益のある不動産を遺留分権利者へ
移転させたケースを考えます。

(1)改正前民法での課税関係
形成件である「物権的効力」を有していたため、
移転する不動産に対して最初から所有権を
主張できることになります。

そのため、課税上の取扱いとしても
相続財産内部での移転となるため
全て相続税の範疇で課税処理がなされていました。

つまり、含み益には課税されないことになります。

(2)改正後民法での課税関係
遺留分が「金銭債権化」されたことから
遺留分侵害額を請求された者は
遺留分権利者に対して
「金銭債務」を負うことになりました。

含み益のある不動産は
遺言により指定された者に帰属します。

遺留分権利者はその者に対して、
侵害された遺留分に相当する金銭を
請求することになります。

これに対して、金銭の工面ができない場合などでは、
遺留分権利者との交渉により
一度自らに帰属した含み益のある不動産を
弁済の手段に充てることも考えられます。

つまり、課税上の考え方としては
金銭債務の代わりに含み益のある
不動産により弁済したという扱い、
代物弁済の扱いとして処理されます。

これを示したのが
所得税基本通達33-1の6
(遺留分侵害額の請求に基づく
金銭の支払に代えて行う資産の移転)となります。

この反射として、遺留分権利者が
取得した物の取得費を示したのが
所得税基本通達38-7の2
(遺留分侵害額の請求に基づく
金銭の支払に代えて移転を受けた
資産の取得費)となります。

これらに関する国税庁情報は
以下をご参照ください。

資産課税課情報 第16号
令和元年9月30日 国税庁資産課税課
「『租税特別措置法(株式等に係る譲渡所得等関係)
の取扱いについて』等の一部改正について
(法令解釈通達)」の趣旨説明(情報)

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一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

木下勇人

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