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2022.10.28

法人税と源泉の両方で重加算税は課されるのか?

※2021年11月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

今回のメルマガでは、調査官にもあまり理解されていない
重加算税の規定について解説します。

法人に対する税務調査において、法人が損金算入した
経費(個人的支出など)が否認され、給与課税に
振り替わって源泉が課されるケースにおいて、
重加算税が課される場合を考えてみます
(仮装隠ぺい行為があったことを前提にします)。

このようなケースにおいて、調査官の多くは
「法人税で損金不算入部分に重加算税」に併せて
「源泉でも重加算税」と言ってくるわけですが、
これは明確に誤っています。

つまり、法人税と源泉が連動している場合において、
ダブルで重加算税は課されないというものなのですが、
これは下記の事務運営指針に明記されています。

「源泉所得税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)」
第1 4(認定賞与等に対する重加算税の取扱い)
(略)法人税について重加算税が賦課される
場合において、法人税の所得金額の計算上損金の額に
算入されない役員又は使用人の賞与、報酬、給与
若しくは退職給与と認められるもの又は配当等として
支出したと認められるもの(以下「認定賞与等」という。)
の金額が当該重加算税の計算の基礎とされているときは、
原則として、当該基礎とされている認定賞与等の金額のうち、
当該重加算税の対象とされる所得の金額に達するまでの
認定賞与等の金額については、源泉所得税及び
復興特別所得税の重加算税の対象として取り扱わない。

単純に調査官がこの規定を知らないので、
税務調査では法人税・源泉の両方において
重加算税を課されそうになるわけですが、
これも逆にいうと、税理士が重加算税の事務運営指針を
知らないから適正に反論できないということでもあります。

私は常々、「重加算税に関しては(特に)
各税目の事務運営指針をきちんと読んでください」
と伝えているのですが、これは重加算税の法律が
国税通則法第68条で規定されている一方、
その解釈や実務の運用は各事務運営指針に
詳細に規定されているからです。

重加算税は国税の賦課決定処分ですから、
法令解釈通達は存在せず、実務上は
事務運営指針に規定されているわけです。

上記は法人税・源泉の重加算税はダブル課税されない
という規定ですが、消費税にも注意事項があります。

法人税・所得税における否認項目が重加算税の場合、
消費税も連動して重加算税になるわけですが、
一方で売上除外などによって消費税の判定が
「課税事業者になる」「簡易課税の適用がなくなる」
場合、新たに発生する消費税に重加算税は課されません。

「消費税及び地方消費税の更正等及び加算税の取扱いについて(事務運営指針)」
第2 IV重加算税の取扱い
5(重加算税を課する場合の留意事項)
その課税期間の基準期間たる課税期間(以下
「前々課税期間」という。)に係る消費税の増差税額に
対して重加算税を課す場合には、その原因たる
前々課税期間の不正事実に連動した次の事実に起因して
当該課税期間に係る消費税額が増加するときであっても、
その増加額に重加算税を課すべきことにならない
のであるから留意する。
(1) 基準期間における課税売上高が1,000万円を超え、
当該課税期間について課税事業者となることが判明した場合
(2) 基準期間の課税売上高が5,000万円を超え、
簡易課税制度の適用を受けられないことが判明した場合

この規定も調査官に知られていないため、
特にギリギリ1,000万円未満の売上で申告している
事業者に対して調査が入った場合で、売上除外などで
売上が1,000万円超になったケースでは、消費税全般に
重加算税を課されるリスクがあります。

税務調査では、調査官が重加算税を賦課したいという
内情から何でもかんでも重加算税と指摘される
事案が多いわけですが、事務運営指針から
適正に反論できるケースも多いので注意してください。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

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