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2022.05.27

反面調査に守秘義務はあるのか?

※2021年6月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

税務調査において、納税者がクレームをつけたくなる
状況としてよくあるのが「反面調査」です。

反面調査の実施にも質問検査権があることは
理解していても、反面先で調査状況などの情報を
調査官が漏らしてしまうのは、被調査対象者である
納税者の信用失墜に繋がるケースもあり得ます。

先日質問・相談があった調査事案においては、
調査官が反面先で「課税漏れが〇千万円になる」等の
発言があった(と聞いた)、という問題が発生しました。

まず、調査官の守秘義務を解説しましょう。

国家公務員法第100条(秘密を守る義務)
職員は、職務上知ることのできた秘密を
漏らしてはならない。

国税通則法第127条
国税に関する調査(略)に関する事務に従事している者
又は従事していた者が、これらの事務に関して
知ることのできた秘密を漏らし、又は盗用したときは、
これを二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

上記のとおり、調査官は国家公務員法+国税通則法の
二重で守秘義務が課せられていることになります。

論点を反面調査における守秘義務に戻します。
調査官も反面調査を実施する以上は、反面先には
「被調査対象者に税務調査を実施していること」
を明示する必要は当然にありますし、その旨は
下記の事務運営指針でも明記されています。

「調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等
について(事務運営指針)」

第2章 3(6)注書き

問題は、調査官が被調査対象者に実施している
税務調査の内容や、反面調査に入った理由・事情まで
反面先に伝えることが守秘義務に違反しているかです。

上記法律規定においても、その守秘義務の範囲は
明確ではないことから、反面調査においても
「何を」「どこまで」が守秘義務の範囲なのかは
定かではありません。

ただ、上記相談事例のように、反面先に対して
「課税漏れが〇千万円になる」など伝えることは、
反面調査の実施に当たって必要と考えられないでしょう
から、やはり守秘義務違反と捉えるべきでしょう。

私が実際にある税理士から聞いたケースとして、

「税務署にタレコミがあったらしく、調査を実施する
前に取引先に反面調査を実施され、取引先の間では
あの会社大丈夫か(脱税しているのでは)?」

と噂になったという事案があります。

これも、タレコミの対象となった会社の顧問税理士が
確認したところ、取引先への反面調査において
調査官が「匿名で税務署に情報提供があったので、
まず情報収集のために反面調査をしている」
と話していたことが明らかになりました。

この事案においては「反面調査に入った理由・事情」
まで調査官が言う必要はまったくないため、
担当統括官にクレームを入れた、また
反面調査の結果、タレコミ内容に何の根拠もなかった
ようで税務調査自体が無しになったようです。

当然ながら調査官は反面調査にも守秘義務が
課せられている一方で、反面調査では守られるべき
被調査対象者の情報が安易に流れてしまう
ケースもあります。その場合は、守秘義務の観点から
税務署にはクレームを入れなければなりません。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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