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2023.12.15

令和5年度税制改正大綱(相続時精算課税制度)

※2022年12月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

税理士法人レディングの木下でございます。

今回のテーマは
「令和5年度税制改正大綱(相続時精算課税制度)」です。

令和4年12月16日 与党より
令和5年度税制改正大綱が公表されました。
https://storage.jimin.jp/pdf/news/information/204848_1.pdf

直近数年間で継続的に議論されたテーマですが
令和4年10月に合計3回の
「相続税・贈与税に関する専門家会合」が開催されました。
https://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/sozoku-zoyo/index.html

それを踏まえて、与党税制調査会がとりまとめを行った形です。
もちろん財務省の意見を聞きながらにはなりますが。

大綱が発表される前の新聞報道等において
相続時精算課税制度に関する報道は
「使い勝手の向上」という切り口で
「少額であれば申告不要」という感じでした。

筆者自身は、申告は不要であるが
相続税と贈与税の一体化という趣旨からは
相続時に持ち戻す(精算する)と考えていました。

しかしながら、大綱における以下の表現(後半部分)からは
持ち戻す(精算する)とは読めない状況です。

「・・・、現行の基礎控除とは別途、
課税価格から基礎控除 110 万円を
控除できることとするとともに、
特定贈与者の死亡に係る相続税の
課税価格に加算等をされる当該
特定贈与者から贈与により取得した
財産の価額は、上記の控除をした
後の残額とする。」

これには正直なところ・・・
衝撃が走りました

つまり、相続時精算課税制度を選択さえすれば、
相続開始直前でも年間110万円までの贈与は
持ち戻し(精算)されないことを意味します。

であれば・・・
方針としては以下の方向性が示されます。

受贈者が
1.相続人であれば相続時精算課税の選択
2.相続人以外であれば暦年課税のまま

次回、取り上げる
「暦年贈与の持ち戻し期間延長」おいて
持ち戻し期間が相続開始7年前となるため
上記の判断になる想定になります。

いわゆるキャッシュリッチな超富裕層であれば、
対相続人であっても暦年贈与の方が
有利になるケースも存在する可能性はありますが、
ほとんどの場合は、相続時精算課税の方が
有利になることになります。

ただし、1.については
相続人であっても被相続人の相続時に
何も相続しないことが意思として
ハッキリしていれば暦年贈与のままでも
問題ないかもしれない。

また、2.については
相続人以外(孫)であっても被相続人の相続時に
遺贈で財産を取得する場合には
相続時精算課税を選択する可能性は残ります。
ただし、受贈者が18歳以上である必要があります。

■相続時精算課税制度選択における注意点
1.選択制であるため、確定申告時に届出をさせる
その場合には、暦年贈与との有利不利判定など
税制の説明を慎重に行い説明責任を果たす必要があります。

2.将来の税務リスク
本来、相続時精算課税導入の趣旨が
「相続税と贈与税の一体化」にあることからすると
多くの受贈者が相続時精算課税を選択したのち
110万円の基礎控除を撤廃する可能性も
ゼロではないのではないでしょうか。

3.大綱における(3)の存在
大綱中「その他所要の措置を講ずる。」とありますが
その内容が何を意味するかは法案や施行令などが
明らかになるまでは、相続時精算課税を選択させることに
慎重になるべきではないかと考えています。

その他、まだまだ気になる部分はありますが、
次回以降、大綱(資産課税)における速報を
順次お届けしていきます。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

木下勇人

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