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2021.12.24

税務調査での減額更正は税務署の義務か?

※2020年12月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

先週水曜の本メルマガに引続き、
税務調査で税額減となる場合の対応ですが、
今回は「減額更正してください」と主張すれば、
調査官はそれに応じなければならないのか、
について解説します。

まず実務上は、調査官が「調査後に
更正の請求をしてください」と言っても、
「職権による減額更正してください」と
主張すべきです。この点については、
すでに先週のメルマガで解説しました。

では、このように主張すれば調査官
(税務署)が減額更正をしなければならないか
という論点ですが、「義務ではない」
(減額更正しなくてもいい)というのが
税務上の解釈とされています。

まず、国税通則法第74条の11第3項
によって、税務調査での是認後はもとより、
修正申告(の勧奨に応じた)後であっても
更正の請求は認められているので、税務署が
減額更正しなくても、納税者が不利になる
ことはないというのが1つの考え方です。

そして根本的な考え方として、
「更正の請求の排他性」があります。

これは、「納税者が更正の請求によることなく
申告に係る課税標準等又は税額等の過誤の是正
を求めることは、その方法以外にその是正を
許さないならば、納税者の利益を著しく
害すると認められる特段の事情がある場合を
除き、許されない」とするものです。

国税通則法にこのような規定があるわけでは
ありませんが、多数の判決・裁決でも
この考え方が解釈・支持されています。

つまり、税務署としては納税者が不利に
ならない限り、職権による減額更正をする
義務はなく、納税者が更正の請求をできる
のであればそちらを優先するということです。

ですから、税務調査で当初申告の税額より
減になり還付を受けられるような場合でも、
税務署が職権による減額更正をしなければ
ならないわけではありません。

ただし、繰り返しますが【実務上は】
更正の請求ではなく減額更正を
依頼する方が納税者のリスクは減ります。

また、更正の請求の排他性で勘違いされやすい
論点として、下記のケースがあります。

・売上計上漏れ:100
・未計上経費;70

総じて、増差所得30となる修正申告

このような場合に売上計上漏れ100だけで
修正申告の提出を要請し、未計上経費70
については更正の請求をしてくれ、と言う
調査官もいますが、これは違います。

これは総じて修正申告になるわけですから、
更正の請求の排他性が適用になりません。

売上計上漏れ100だけの修正申告を
主張する調査官は自らの成績(増差所得)を
上げるために言うわけですが、これを
受入れてしまうと、加算税(の差額)分だけ
納税額が増えてしまいますので注意が必要です。

この論点を争った公開裁決事例は
下記(の争点1)を参考にしてください。

https://www.kfs.go.jp/service/JP/71/05/index.html

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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