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2020.05.29

個人から同族法人への外注費が否認される論拠

※2019年2月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

先週から引続き、個人事業主が同族法人に
対して外注費等を支払っている場合に、
必要経費として否認されるケースを解説しますが、
その論拠はいったいどこにあるのでしょうか?

また、否認されないためには、何を
どうすればいいのでしょうか?

先々週のメルマガでは、必要経費が否認された
判決として、下記を取り上げました。

大阪地方裁判所・平成30年4月19日判決
「LPガス等の燃料小売業者が同族会社へ
支払った業務委託費(必要経費該当性)」
(TAINSコード:Z888−2201)

この判決文の中でもありましたが、「本来は
必要経費に算入することのできない事業主自身の
労働の対価を、個人事業の必要経費とすることが
できることとなり、ひいては、税額の自由な
操作を許すことになりかねない」
という論点があります。

逆をいえば、法人で従業員を雇用しており、
その作業報酬を支払うのであれば、
それは正当な対価として認められる
(認められやすい)といえます。

例えば、税理士事務所と会計法人で考えると、
税理士事務所(個人)がすべての売上を
計上する場合、法人側で(税務以外の)
会計処理業務をする従業員を雇用しているのであれば、
その適正な報酬を個人事業主側が支払うことは
当然の話ですが、一方で、法人側に雇用なく、
税理士のみが法人代表者になっているような場合は、
否認される(可能性がある)という論点です。

これを全般的に考えると、
「士業個人事務所⇔同族法人」でよくある
質問なのですが、否認リスクを減らすためには

〇法人側で売上を計上

〇士業独占業務部分の報酬を法人から個人に流す

〇報酬内訳は契約書に明記されているとベスト
(個人に流す報酬を法人側で預り金計上している
のであれば、なお良い)

ということになります。

個人事業主の場合は、支払ったとしても
「その必要性」など問われ、必要経費の
範囲そのものが狭いのに対して、
法人側が実際に支払っている場合は、
その経費性は問題になりにくいからです
(もちろん適正額であることが前提)。

また、個人事業主から法人に外注費を振っている
場合、その法人の売上が外注費のみであり、
他に法人固有の売上がないことも
問題の論点になりやすいでしょう。

このような場合、どうしても法人を利用した
「利益調整」と捉えられやすいからです
(実際に利益調整が多いはずです)。

法人に固有の売上がなければ、
法人の売上額は個人事業主からの外注費
のみですから、利益額はもちろん、
消費税の免税・簡易課税適用まで
コントロールできることから、まさしく
利益調整という論点になってしまいます。

こうなると、ますます「法人に外注費を
支払う必要性はない」という調査官の論拠
が強くなる(反論しにくくなる)のです。

なお、最後になりますが・・・
今回取り上げたケースも、否認根拠が
行為計算否認ということであれば、
外注費の必要経費が否認される一方で、
法人側の売上は取り消されます
(支払っていないこととして再計算)。

ただし、純粋に必要経費の否認
(所得税法第37条)という話になれば、
個人事業主の経費が否認されるだけで、
法人側の売上減にはなりませんので、
かなり頭の痛い問題になります。

否認の根拠によっても税額は大きく変わります
から、ぜひ併せて注意してください。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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