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2021.08.03

社宅として取扱うのに要件は必要か?

※2019年10月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

前回から引続き、従業員社宅について解説しますが、
今回はまず税務調査の実例から紹介します。

【実際の調査事案】(あえて簡略化しています)

・X社の本社は都内で、工場は神奈川県にある

・工場勤務となった社員1名の社宅について
経済的利益アリとして否認指摘があった

・該当する社員には持ち家がある

・工場勤務にともなって社宅に転居

・転居にともない住民票を社宅に異動

・社員から賃貸料相当額を徴収している

・調査官は住民票が移っていることから、
「生活の拠点が社宅と考えられる」として
経済的利益が発生していると指摘

・なお、同状況の別社員で住民票を持ち家から
移していない社員に関しては否認指摘なし

さて、この調査官の指摘は正しいのでしょうか。
住民票を移すなど、生活の拠点が社宅にあれば
経済的利益は発生するのでしょうか。

この否認指摘には根拠はないものと思われます。
「社宅」の定義は、税法上明確にはありませんが、
通達等から考えると「法人が役員・使用人に対して
住宅や寮を貸与する」ものを全般的に
社宅としているものと考えられます。

ここに、本人が生活の拠点を持っていて、
別に社宅に居住した場合の区分はありません。

また、社宅とは広く考えると、業務上の必要に
基づいて提供する住宅のみならず、福利厚生目的
であっても社宅と言えるはずです。

この点からも「社宅に生活の拠点がある・ない」
ことと、経済的利益は関係がないことになります。

実際に、国税庁の該当ページを読んでも、
社宅の要件は定義されていません。

「No.2600 役員に社宅などを貸したとき」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2600.htm

「No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2597.htm

全般を整理すると下記のようになります。

社宅(使用者から役員または使用人に対して、
福利厚生目的のため又は使用者の業務上の必要に
基づき提供される住宅)である

経済的利益が発生するかどうかは、
役員と使用人ごとに判断が必要

原則として本人から「賃貸料相当額」を
徴収していれば経済的利益はないものとする

上記調査実例のように、そもそも
「社宅に該当しない」と指摘されるケースも
ありますので、社宅についてきちんと理解し、
適正に反論してください。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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