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2017.04.07

手帳は税務調査で見せなければならないのか?

※2016年11月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

株式会社InspireConsultingの久保憂希也です。

税務調査の対象となるモノの範囲については、
実務上かなり判断が難しいケースがあります。

例えば、社長の「手帳」(スケジュール)。

私もそうなのですが、多くの社長はスケジュールを
仕事とプライベートを一体にしている・混在したまま
管理しているものと思います。

その手帳・スケジュール表をそのまま見せなければ
ならないのかというと、もちろんプライベートの
部分を見せる必要性はない、となるわけなのですが、
混在している場合は、切り分けなどできないわけです。

さて、まず原則論から解説しましょう。
質問検査権を定める条文には下記(一部のみ抜粋)
が定められています。

国税通則法第74条の2
「その者の事業に関する帳簿書類その他の物件を検査し、
又は当該物件の提示若しくは提出を求めることができる」

ここにいう「その他の物件」が、
いわゆる「不確定概念」と呼ばれるもので、
明確な規定等は存在しない範囲になります。

この判断をするうえでもっとも重要なことは
上記法規定にある「その者の事業に関する」です。

例えば、国税庁のサイトには下記が載っています。

税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)
「問7 法人税の調査の過程で帳簿書類等の提示・提出を
求められることがありますが、対象となる帳簿書類等が
私物である場合には求めを断ることができますか。」

回答としては・・・

「法令上、調査担当者は、調査について必要があるときは、
帳簿書類等の提示・提出を求め、これを検査することが
できるものとされています。この場合に、例えば、
法人税の調査において、その法人の代表者名義の個人預金
について事業関連性が疑われる場合にその通帳の提示・提出
を求めることは、法令上認められた質問検査等の範囲に
含まれるものと考えられます。調査担当者は、
その帳簿書類等の提示・提出が必要とされる趣旨を説明し、
ご理解を得られるよう努めることとしていますので、
調査へのご協力をお願いします。」

としていますので、裏を返すと
事業関連性がなければ当然見せる必要がない、
という解釈になります。

手帳のみならずパソコンについても、
調査官はよく「経費で購入しているのだから、
質問検査権の対象になる」という言い方を
しますが、それは間違っています。

この調査官の主張をそのまま裏を返すと
「(経費ではなく)個人的に購入したものであれば
調査では見せる必要がない」と捉えることができますが、
あくまでも、調査対象になるのは
「事業に関するかどうか」が判断基準なのです。

法人の経費で購入したパソコン・スマホであっても、
仕事もすれば、個人的なメールもするわけです。

手帳をいちいち、仕事用とプライベート用を
分けることの方が、むしろ怪しいとさえ言えます。

話を戻すと、手帳が調査範囲に含まれるかどうかは
まず「事業関連性があるのか」、そしてさらには
そもそも「何のために手帳を見たいのか」
が本論で、スケジュールを確認しなければ
本当に益金・損金が判断できない場合になります。

このあたりは、調査現場の機微をともなう
ポイントになりますので、ぜひ注意してください。

 

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一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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