2015.10.23

再調査の要件

今年から適用開始になった税務調査の手続きにおいて、
あまり知られていない規定に「再調査」があります。

昨年までであれば、1度調査を受けた年分でも、
理由なく再度税務調査の対象年分になり得たわけですが、
今年からは明確な「要件」が必要となりました。

まず、法律を確認してみましょう。

国税通則法第74条の11第6項(調査の終了の際の手続)
第1項の通知をした後又は第2項の調査の結果につき
納税義務者から修正申告書若しくは期限後申告書の提出若しくは
源泉徴収による所得税の納付があつた後若しくは更正決定等をした後
においても、当該職員は、新たに得られた情報に照らし非違があると
認めるときは、第74条の2から第74条の6まで(当該職員の質問検査権)
の規定に基づき、当該通知を受け、又は修正申告書若しくは
期限後申告書の提出若しくは源泉徴収による所得税の納付をし、
若しくは更正決定等を受けた納税義務者に対し、質問検査等を行うことができる。

このように、再調査の要件は法律において、
「新たに得られた情報に照らし非違があると認めるとき」
が要件とされています。

この要件はある程度漠然としているため、
法令解釈通達において下記のように定められています。

国税通則法第7章の2(国税の調査)関係通達の制定について(法令解釈通達)
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/zeimuchosa/120912/03_3.htm#a05_7

5-7(「新たに得られた情報」の意義)
法第74条の11第6項に規定する「新たに得られた情報」とは、
同条第1項の通知又は同条第2項の説明(5-4の「再度の説明」を含む。)
に係る国税の調査において質問検査等を行った当該職員が、当該通知又は
当該説明を行った時点において有していた情報以外の情報をいう。
(注) 調査担当者が調査の終了前に変更となった場合は、
変更の前後のいずれかの調査担当者が有していた情報以外の情報をいう。

5-8(「新たに得られた情報に照らし非違があると認めるとき」の範囲)
法第74条の11第6項に規定する「新たに得られた情報に照らし
非違があると認めるとき」には、新たに得られた情報から非違があると
直接的に認められる場合のみならず、新たに得られた情報が直接的に
非違に結びつかない場合であっても、新たに得られた情報と
それ以外の情報とを総合勘案した結果として非違があると
合理的に推認される場合も含まれることに留意する。

5-9(事前通知事項以外の事項について調査を行う
場合の法第74条の11第6項の規定の適用)
法第74条の9第4項の規定により事前通知した税目及び課税期間以外
の税目及び課税期間について質問検査等を行おうとする場合において、
当該質問検査等が再調査に当たるときは、法第74条の11第6項の
規定により、新たに得られた情報に照らし非違があると
認められることが必要であることに留意する。

さらに事務運営指針では
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/jimu-unei/sonota/120912/index.htm

(6) 再調査の判定
更正決定等をすべきと認められない旨の通知をした後又は
調査の結果につき納税義務者から修正申告書等の提出
若しくは源泉徴収に係る所得税の納付があった後若しくは
更正決定等をした後に、当該調査の対象となった税目、
課税期間について質問検査等を行う場合には、新たに
得られた情報に照らして非違があると認める場合に該当するか
否かについて、法令及び手続通達に基づき、個々の事案の事実関係に
即してその適法性を適切に判断する(手続通達5-7、5-8、5-9)。

と規定されています。

ここで、税務署内にも実務上の問題点があります。

それは簡単に説明すると、「以前調査をしたかどうかが
KSK上ではわからないケースがある」という問題です。

例えば、源泉所得税の場合、このような問題があります。

「個通 調査手続等に関する当面の事務実施要領について(法人課税事務関係)
(指示) 平成24年9月20日 課法4-51ほか3課共同」

平成24年12月28日以前に実施した法源消同時調査において、
源泉非違がなかった場合は、源泉所得税の調査事績がKSKに
入力されていないため、KSKにおいて源泉調査の有無を
確認することができないが、この場合は、前回、
法人税の調査が行われた期間に源泉所得税の調査も
行われているものとして取り扱うこととする。

と規定されています。

つまり、以前は再調査の規定がなかったので、調査記録を
すべてKSKに入力されているわけではないということです。
他にもこのようなケースがあり、個別通達で
いくつかの注意点が規定されています。

ですから、調査官が「誤って」、以前調査対象になっていないもの
と認識して、再調査を行おうとする場合も考えられるわけです。

再調査のケースでは、まず調査官に要件を確認すること。

また、調査官が再調査と認識していない場合も
あるので、注意することが必要というわけです。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。
※2013年10月の当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

毎週水曜日に配信する『税務調査対策のメールマガジン』では、最新の税務調査事情はもちろんのこと、調査官の心理、税務署のウラ側など元国税調査官だからこそ語れるマニアックなテーマまでをお届けします。
「こんなことまで話して本当に大丈夫ですか?」 と多くの反響を頂く税理士業界では話題のメルマガです。
お名前とメールアドレスを登録するだけで 毎週【 無料 】でメルマガを配信いたします。