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2015.06.16

保証債務の履行と求償権の行使不能

今回は「保証債務の履行と求償権の行使不能」です。

来年3月末の円滑化法の期限切れが目前となり、

4月以降は中小企業の資金繰りが悪化することも多くなるかと思います。

そうした中、税務上の問題が増えると思われるのが、

社長の代表者保証の履行による不動産譲渡です。

しかし、この譲渡所得に関し、

保証債務の求償権の行使不能における所得計算の特例(所法64②)

が使えるかどうかが微妙な場合もあります。

なぜならば、ここには「その履行に伴う求償権の全部又は一部を

行使することができないこととなったときは」と記載されているからです。

だから、単に債務超過である、赤字であるなどの理由では

これに該当しません。

しかし、事業は継続しており、「この特例が使えるのか?」という

微妙な判断を迫られることもあるでしょう。

そこで判断基準となるのが「保証債務の特例における求償権の行使不能に

係る税務上の取扱いについて(通知)」(平成14年12月25日)です。

ここでは、下記が基準とされています。

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1 求償権行使の能否判定は、他のケースと同様、所得税法基本通達51-11

  に準じて判定する(所得税法基本通達64-1)。このうち、同通達51-11

  (4)については、その法人がその求償権の放棄後も存続し、

経営を継続している場合でも、次のすべての状況に該当すると

  認められるときは、その求償権は行使不能と判定される。

  ①その代表者等の求償権は、代表者等と金融機関等他の債権者との

   関係からみて、他の債権者の有する債権と同列に扱うことが困難

   である等の事情により、放棄せざるを得ない状況にあったと

   認められること。これは、法人の代表者等としての立場に

   かんがみれば、代表者等は、他の債権者との関係で求償権の放棄を

   求められることとなるが、法人を存続させるためにこれに応じるのは、

   経済的合理性を有する、との考え方に基づくものである。

  ②その法人は、求償権を放棄(債務免除)することによっても、

   なお債務超過の状況にあること。これは、求償権の行使ができないと

   認められる場合の判定に際しての考え方である。
 
   なお、その求償権放棄の後において、売上高の増加、債務額の減少等

   があった場合でも、この判定には影響しないことになる。

2 その法人が債務超過かどうかの判定に当たっては、

  土地等及び上場株式等の評価は時価ベースにより行う。
 
  なお、この債務超過には、短期間で相当の債務を負ったような場合も

  含まれる。
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また、この通知が出た後の東京地裁(平成19年4月20日、確定)でも

下記とされています。

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保証債務の特例に規定する「求償権の全部又は一部が行使することが

できなくなったとき」に当たるかどうかは、債務者の資産状況、支払能力等

の債務者側の事情だけでなく、求償債権を行使する債権者側の事情等の

客観的事情を総合考慮した上で、所得税の確定申告期限において求償債権の

回収の見込みのないことが確実となったか否かにより判断するのが

妥当である。
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だから、結果として、事業を継続していたとしても、

保証債務の履行による譲渡の特例は使える場合もあるということです。

なお、上記通知の中には下記記載もあります。

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Ⅱ特例の適用に関する相談等の対応

保証債務の特例に関して相談があった税務署においては、

仮に確定申告時点において求償権行使不能と判定されない場合であっても、

その後、求償権が行使不能な状態に陥ったときには、

所得税法第152条による更正の請求ができるのであるから、

その旨及びその手続等について説明する。

また、納付困難との申し出があった場合には、納付についての相談に応じる。
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いかがでしょうか?

来年の4月以降は、この論点は確実に増えると考えています。

もし、みなさんの事務所でも同様の事案があれば、

是非、このブログをご参考になさってくださいね。

 

※ブログの内容等に関する質問は
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2012年12月の当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

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