• HOME
  •  › ブログ
  •  › 消費税の還付申告:資料提出要請を断るべきなのか?
2022.10.14

消費税の還付申告:資料提出要請を断るべきなのか?

※2021年10月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

私に対してよくある質問の1つとして、
「更正の請求を提出したが税務署から連絡があり、
(添付とは別に)追加の資料を求められたが
これに応じるべきか?」というものがあります。

この更正の請求と根本論は同じと認識していますが、
今回のメルマガでは、消費税の還付申告をした場合、
税務署から追加の資料提出要請について考えてみます。

消費税の還付申告については実務上で体感している通り、
年々審査の基準が厳しくなっており、追加の資料提出も
「これが本当に必要なの?」と思ってしまう場面も
増えたはずです。

先日あった質問は、下記のような事案です。

・中古不動産を購入して消費税の還付申告

・購入の相手方は親会社

・対価=時価算定において不動産鑑定評価書をとっている

・追加の資料提出として要請された契約書・領収書・
決済状況の書類については納得ができる

・上記以外の提出要請として不動鑑定評価書があるが
応じなければならないのか?

この質問は、税務判断を基礎とした考え方に
合致しており、ごもっともな疑問かと思います。

なぜなら、仕入税額控除の要件は時価ではなく、
あくまでも当事者間で授受することとした対価の額
であることから、契約書などの提出は当然としながら、
対価=時価の算定根拠は不要ではないか、
という論理的な考え方に立脚しているからです。

さらには、消費税の還付申告に添付する書類の要件は
消費税法第46条第3項に「当該課税期間中の
資産の譲渡等の対価の額及び課税仕入れ等の税額の明細
その他の事項を記載した書類を添付しなければならない」
とされていることから、やはり上記の事案においては
契約書などは必要であるものの、不動鑑定評価書は
(法律上の解釈としては)必要ないと考えられます。

一方で、対税務署との現実はどうなるのでしょうか。
追加資料の提出を断った・提出した場合について、
各ケース別に考えてみましょう。

1 提出しなくてもそのまま還付される
2 提出がないため還付されず税務調査に切り替わる
3 提出したことで税務署が納得して還付される
4 提出したが内容に疑義があり税務調査に切り替わる

結局のところ、この4つのケースのどこに該当しそうか
という確率論であり、かつ顧問先(顧問税理士)として
「どうなったら困るのか」の総合勘案で
判断することになるわけです。

私の見解(結論)はシンプルで、更正の請求にしても
消費税の還付申告であっても、税務署から
追加の資料提出要請があれば、その内容の
【必要性を問わず素直に応じた方がいい】というものです。

なぜなら、(一部であっても)税務署が求める
資料を提出しないということは、税務署が
机上審査で納得しない、もしくは提出されないことに
税務署が疑義を感じる確率が圧倒的に高いからです。

特に、更正の請求や消費税の還付申告の場合、
「税務署が疑義を残す=還付しない」となり、
至る行動は税務調査しかありません。

税務調査に切り替わって喜ぶ納税者(顧問先)はいない
はずですから、どのような追加の資料提出であれ、
特段やましいことがないのであれば
(法的には提出義務がないとしても)
追加の提出要請に応じた方が得策のはずです。

顧問税理士が法的な正しさを税務署に主張する
がために、税務調査に切り替わる確率が高まる
というのは理論と実務の乖離のように感じますが、
顧問先が困る状況にしないことを最優先に考えれば
取るべき行動は明確になると考えます。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

毎週水曜日に配信する『税務調査対策のメールマガジン』では、最新の税務調査事情はもちろんのこと、調査官の心理、税務署のウラ側など元国税調査官だからこそ語れるマニアックなテーマまでをお届けします。
「こんなことまで話して本当に大丈夫ですか?」 と多くの反響を頂く税理士業界では話題のメルマガです。
お名前とメールアドレスを登録するだけで 毎週【 無料 】でメルマガを配信いたします。