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2022.07.22

税務調査で調査官の要請に応じなくていい範囲とその理由

※2021年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

先週水曜の本メルマガでは、調査官が実施する反面調査、
従業員へのヒアリング等で「質問応答記録書」を
提出しないことの重要性について解説しました。

調査官から質問応答記録書への署名押印を求められても、
断ることができる根拠として国税の内規である
「質問応答記録書作成の手引について(情報)」にも
その旨の記載があるからと説明されることが多いのですが、
もう一段掘り下げて考えると、

質問応答記録書の提出要請=行政指導
(=質問検査権の範囲外)

という理解になります。

国税通則法などにおける質問検査権の規定には、
「質問応答記録書などの書面を提出させることができる」
などの記載は一切ありません。

質問検査権の範囲外であるということは、
それに対する受忍義務はないということですから、
その要請に応じる必要性はない、という論理です。

質問検査権の範囲外における調査官の要請を
断るためには、国税の内規などを持ち出すまでもなく、
【この要請は任意ですか?それとも強制ですか??】
と調査官に問うことが有効です。

こう問われて調査官が「任意です」と答えれば、
「任意なのであれば断ります」と言えるわけです。
主張内容をあえて整理するとこうなります。

「質問検査権の範囲内であれば受忍義務がありますので
もちろん応じますが、(質問応答記録書の提出など)
行政指導ということであれば、応じるかどうかは
納税者の任意です(任意であれば断ることができます)」

このように、税務調査内であったとしても、
質問検査権の行使でない、行政指導という行為が
内在している場合があります。
その典型例は「修正申告の勧奨」でしょう。

税務調査において調査官から否認指摘を受け、
誤り・漏れ等があった場合は、「修正申告に
応じなければならない」と考えている税理士も
多いように思いますが、それは間違っています。

修正申告の勧奨が行政指導に該当するという
説明については下記をご覧ください。

「脅しの言葉に反論する根拠法律」

これと同内容の説明が国税庁のFAQにあります。

「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」
問25 調査結果の内容説明を受けた後、調査担当者から
修正申告を行うよう勧奨されましたが、勧奨には
応じなければいけませんか。また、勧奨に応じないために
不利な取扱いを受けることはないのでしょうか。
(答)
(略)この修正申告の勧奨に応じるかどうかは、
あくまでも納税者の方の任意の判断であり、
修正申告の勧奨に応じていただけない場合には、
調査結果に基づき更正等の処分を行うこととなりますが、
修正申告の勧奨に応じなかったからといって、
修正申告に応じた場合と比較して不利な取扱いを
受けることは基本的にはありません。(以下、略)

さらに、(相続税など)税務調査内でお尋ねなど
書面提出を求められるケースもあるのですが、
この要請もあくまでも行政指導に該当します。
繰り返しになりますが、質問検査権の範囲外だからです。
この詳細については下記の記事をご覧ください。

「税務調査中にお尋ね書面の提出を求められた場合」

税務調査において調査官が要請する行為を、

●質問検査権の範囲内:応じなければならない

●質問検査権の範囲外=行政指導
:応じるかどうかは納税者の任意

と区分して対応してください。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

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