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2023.03.17

調査対象期間7年と最大7年課税の違い

※2022年3月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

税務調査において、毎期の売上計上漏れなどが
発覚した場合、調査官から「調査対象期間を
7年にします」と言われることがあります。

ここで解釈が難しい問題として、
「【調査】対象期間が7年になる」ことと
「【課税】対象期間が7年になる」ことの
相違があります。

まず、調査対象期間が何年でなければならないか、
という法律規定はありません。

一般的には、事前通知において3年(もしくは5年)
とされるわけですが、これを5年(もしくは7年)に
延伸される法的根拠として、国税通則法
第74条の9第4項の規定がありますので、
この要件を満たしていれば、調査対象期間の延伸は
法的に問題ない(合法)ということになります。

「調査対象期間が3年から5年に延びる要件」

一方で【課税】対象期間は、更正の除斥期間
として国税通則法第70条に規定されています。

更正の除斥期間は原則として5年ですが、
「偽りその他不正の行為」=脱税となれば
最大で7年間に延伸されることになります。

では、税務調査において毎期の売上計上漏れが
存在し、6~7年前も売上計上漏れが
推定できるようなケースにおいて、納税者が
「あくまでも売上の計上漏れなのであって
売上除外ではない=脱税ではない」と
主張すれば、6~7年前の帳簿等を
提示・提出する義務はないのでしょうか。

もちろん、納税者側から「脱税ではない」旨の
主張をして、調査官が納得すれば
調査対象期間も5年で済むでしょう。

しかし「6~7年前の帳簿等も見せてください。
見たうえで課税期間を判断します」と
言われてしまうと、反論は不可能でしょう。

なぜなら上記のとおり、あくまでも
調査対象期間(の延伸)と課税の除斥期間は
別論点(根拠)となっており、第74条の9
第4項を満たす限り、調査官は
調査対象期間を延伸することが可能なのです。

上記の論点はややこしいので、極端な事例で
考えてみると、事前通知の段階で
「調査対象期間を7年」とされるのは、
国税の違法行為かという論点があります。

まだ調査を実施していないので脱税行為が
あったかどうかは不明なわけですが、
調査対象期間が7年の事前通知は、何か
法律に抵触しているわけではありません。

上記のとおり、調査対象期間を定めた
法律規定はありませんし、いきなり
7年分を課税されたわけでもありません。

実際に、資料調査課の調査などでは、
事前通知で7年とされるケースもあります。

このように、脱税が疑われる調査事案では、
「脱税ではないので7年遡及できない」
と主張することで、調査対象期間を
5年に抑えることは調査官の納得が必要で、
調査官が「とりあえず7年分の帳簿を
提示してください」と主張してくれば、
6~7年前の帳簿等を提示したうえで、
「偽りその他不正の行為ではないので、
課税期間は5年以内になります(なるはず)」
と主張するしかないのです。

調査対象期間と課税対象期間は
基本的にリンクしているはずですが、
厳密に考えると上記のように
相違しますので十分理解してください。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

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