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2019.04.19

死亡保険金、役員退職給与、功績倍率について

※2018年6月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

日本中央税理士法人の見田村元宣です。

今回は「死亡保険金、役員退職給与、功績倍率について」ですが、

昭和63年9月30日の静岡地裁判決(平成元年1月23日、

東京高裁にて確定)をご紹介します。

創業者社長などの死亡に伴い、多額の死亡保険金が法人に入金された場合、

それと同額または相当額の役員退職給与を支払いたくなるのが、

遺族(同族役員)の心情であることも少なくありません。

しかし、「死亡保険金として入金された額」と

「役員退職給与の税務上の適正額」の間には関係が無い

というのが過去の税務訴訟の一貫した考え方です。

本裁判でも下記と示されてます。

このように保険金収入と同額の金員を当該死亡役員の退職給与として

支給した場合であつても、利益金としての保険料収入と、損金としての

退職金支給とは、それぞれ別個に考えるべきものであるし、一般に会社が

役員を被保険者とする生命保険契約を締結するのは、永年勤続の後に退職

する役員に退職給与金を支給する必要を充足するためと、役員の死亡により

受けることがある経営上の損失を填補するためであるというべきであるから、

会社が取得した保険金中、当該役員の退職給与の適正額より多額であると

認められる部分は、役員の死亡により会社の受ける経営上の損失の填補の

ために会社に留保されるべきものである。

同じ旨が大阪地裁(昭和31年12月24日)、

長野地裁(昭和62年4月16日)、浦和地裁(平成3年9月30日)、

高松地裁(平成5年6月29日)などでも示されています。

では、このようなことも想定して、

できるだけ役員退職給与を高く支払うことができるようにするには、

どうしたらいいのでしょうか?

これは最終報酬月額がいくらであるのか?ということによる部分も

大きいので、これをできるだけ多額にしておくことが必要です。

もちろん、過大役員報酬という論点もありますが、

退職間際での増額でなければ、過大役員報酬で否認されるケースは

少ないと考えます。

実際、過去の裁決や判決の数を見ても、

過大役員退職給与の否認事例に比べ、

過大役員報酬の否認事例は少ないのが現実です。

だから、最終報酬月額がいくらであるのか?ということが

重要なのですが、その次に重要なのが功績倍率です。

一般的に、社長の場合は3倍と言われていますが、

これは絶対的な倍率ではありませんし、下記の判決もあります。

大分地裁判決(平成21年2月26日)。

仮に法人一般において3倍程度の功績倍率が採られることが多いとしても、

そのことをもって直ちに原告において功績倍率3.5で退職給与を

支給することが相当であると評価することはできない。

では、功績倍率は何倍までであれば、

税務調査で問題にならないのでしょうか?

私見になりますが、

〇地元でも有名な優良会社というレベルの会社

〇何十年も社長を務めた貢献度の高い創業者社長

という前提で、4.0程度は否認されないのではないか?

と考えています。

ちなみに、上記大分地裁判決では、

創業者社長乙の死亡退職に伴う役員退職給与に関し、

下記の判決が下されました。

〇乙は、個人で運送業を始めた数年後に原告を設立した創業者であり、

昭和43年から平成14年の死亡退職に至るまでの間、

代表取締役を務めて原告における営業活動を一手に引き受けていた。

〇原告の利益率は同業種・類似規模の法人の中では突出して高く

(売上総利益率は12比較法人の平均の2倍以上である)、

乙の退職前10年くらいの間は原告に毎年平均して4,500万円程度の

所得を計上させるなど、原告を収益性の高い法人に発展させた。

〇創業者として好業績の法人である原告を維持発展させた

乙の功績は極めて大きいものといえる。

〇功績倍率は3.5で計算すべき

ちなみに、3.5は納税者がそもそも採用し、

国税も更正段階で3.5を採用し、裁判所も認めた倍率です。

しかし、功労金加算を含めると、功績倍率は4.6になってしまっており、

これを国税が問題にし、裁判所も認めなかった訳です。

ということから、

〇業界平均と比べ、財務状態が良い優良会社

〇何十年も社長を務めた貢献度の高い創業者社長

というレベルでは功労金加算も含めて計算した4.6という

功績倍率が認められていないのです。

では、私が4.0程度という数字を書いたのかというと、

納税者が採用した功績倍率が4.0で更正をされた事例を

見つけることができなかったからです。

上記大分地裁の事例でも、功労金加算約6,000万円をせず、

功績倍率が4.0であれば、更正されなかったのではないか?

とも考えます。

過去の否認事例の多くは功績倍率が「かなりの高率」になっている

事例が大半です。

後付けにはなりますが、

「これでは更正されても仕方ない」と思えるものも沢山あります。

だから、功績倍率を目に余るような高率にすることは

否認リスクがありますが、その分岐点は4.0程度ではないか

と考えるのです。

実際、4.0倍程度の類似法人が抽出されて、

平均功績倍率が計算されることも多い訳です。

そういう意味からも、優良会社の創業者社長という前提ですが、

4.0程度であれば、否認されないのではないかと考えるのです。

では、「程度」というのは4.0をどこまで超えてもいいのか?

そこはなんとも言えない世界ですので、

お客様がどこまでリスクを取れるかということになりますが、

個別判断ということになります。

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