2022.10.28

修正申告と更正の相違点

※2021年11月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

毎週金曜の本メルマガでは、税務調査を体系的に理解する
内容を連載で解説していますが、今回は前回から引続き、
「修正申告と更正の相違点」について解説します。

まず、法的・手続き論としての相違点ですが、
突き詰めると「処分か処分でないか」だけであって、

●更正=賦課決定処分なので不服申立てできる

●修正申告は不服申立てができない
(ただし、加算税は別途で不服申立てできる)

という1点になります。

ただし、修正申告をしてもそれに対して
更正の請求をすることができますので、
更正の請求が却下されれば不服申立ては可能です。

前回のメルマガでも解説しましたが、更正だから
納税者に不利益があるという「法的な」理解は
明らかに誤りで、むしろ不服申立てできる権利が
あるという点では更正の有利なのかもしれません。

では、【実務的・現実的な】観点から考える
修正申告と更正の相違点とは何でしょうか?

この点については、つい先日も現在募集中の「習得会」
でも実際に質問・相談がありました。

一言でいえば、税務調査の終了において
修正申告せずに更正(されること)を選択すると、
調査官との交渉・バーターなどは一切できません。

税務署側から考えると、税務調査を実施したうえで
更正するということは、以降に不服申立てされることを
前提にしますので、それに耐えうる資料・証拠を
集める必要があるということです。

ですから、更正においてグレーゾーンは存在せず、
調査現場ではよくある「Aは認容しますので
BとCだけで修正申告に応じてください(応じます)」
という交渉・バーターはできなくなります。

もう少し掘り下げると、修正申告は
調査官(税務署)と納税者の双方が納得すれば
いいわけですが、更正はそうではありませんので、
更正(される方)を選ぶと、資料・証拠を
揃えるために調査の時間が長引く可能性が高いです。

結局のところ、税務調査の終わり方を更正ではなく
修正申告にしたいのは、納税者側ではなく
調査官の事情・内情ということになります。

調査官が更正を嫌がる理由は大きく3つあります。

●不服申立てが前提となっている
(資料・証拠を揃えるのが大変)

●附記すべき理由を曖昧にはできない
(否認根拠を法令等で明確にしなければならない)

●税務署内の手続きが面倒
(税務調査の件数ノルマがこなせない)

だからこそ、税務調査では「修正申告に応じるので
一部は認容してください(否認指摘を一部取り下げて)」
と交渉した方が、結果としては納税者有利に
なりやすいというのが現実論でしょう。

きちんと手続き論を理解しているからこそ、
税務調査では正しい交渉ができるともいえます。

来週金曜の本メルマガでは、税務調査終了の際の
手続きとしてまだ解説してない「手続きの相手方」と
「再調査」の規定を取り上げます。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

毎週水曜日に配信する『税務調査対策のメールマガジン』では、最新の税務調査事情はもちろんのこと、調査官の心理、税務署のウラ側など元国税調査官だからこそ語れるマニアックなテーマまでをお届けします。
「こんなことまで話して本当に大丈夫ですか?」 と多くの反響を頂く税理士業界では話題のメルマガです。
お名前とメールアドレスを登録するだけで 毎週【 無料 】でメルマガを配信いたします。