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2016.05.30

簿外資金の捻出と認定賞与

※2015年1月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

日本中央税理士法人の見田村元宣です。

さて、今回は「簿外資金の捻出と認定賞与」ですが、

平成9年7月3日の裁決(全部取消し)を取り上げます。

本件の詳細は取引が複数回、かつ、多岐に渡っているので、複雑なのですが、

概要をまとめると、下記となります。

○請求人は印刷業を営む同族会社

○経営が苦しく、請求人は友人から融資を受けた(以下、「本件借入金」)

○本件借入金は請求人の決算書に計上されていない

○銀行から印刷機械の購入価額を水増しした融資を受け、簿外資金を捻出

○当該簿外資金により、本件借入金を返済

○本件借入金が個人的債務とされ、簿外資金の捻出によりされた本件借入金の

返済が認定賞与とされた

この状況の中、国税不服新派所は下記と判断しました。

○請求人は、当審判所に対し、■■■■■■を貸主、請求人を借主、■■■■

を連帯保証人とし、貸金の額を10,000,000円とする平成3年7月

10日付金銭消費貸借契約証書を証拠資料として提出していること。

○請求人は、当審判所に対し■■■■■■が発行した請求人あての上記金銭

消費貸借契約証書に係る貸金10,000,000円を領収した旨の平成6年

8月24日付領収証を証拠として提出していること。

○■■■■■■の代表取締役である■■■■は、当審判所に対し、上記金銭

消費貸借契約証書及び領収証の内容が事実である旨答述し、確認の文書を提出

していること。

○本件借入金の存在について
         
本件借入金は請求人の決算書に計上はないものの、本件借入金の存在そのもの

については、原処分庁及び請求人双方に争いがなく、また、請求人の主張と

回答書の内容に違いがあり、請求人が本件借入金の使途を本件簿外資金の使途

と混同したものと認められるものの、請求人の主張も一貫していることを

考えれば、本件借入金は存在するものと推認される。

○本件借入金の借入れの主体について

・請求人は、請求人を借主、■■■■■■を貸主、■■■■を連帯保証人と

する平成3年7月10日付の金銭消費貸借契約証書を証拠として提出しており、

契約の相手方である■■■■■■の代表取締役である■■■■もその事実を

認めていることから、請求人が平成3年7月10日に■■■■■■から

10,000,000円を借り入れたものと解するのが相当である。

・また同様に、平成6年8月24日付領収証及び■■■■の証言から判断

すれば、同日に請求人が■■■■■■に対し、10,000,000円を返済

したものと解するのが相当である。

○原処分庁の事実認定について

・原処分庁は、「本件借入金は、上記aの現金貸付資金及び上記bの融通手形

の買戻資金が必要であったため、■■■■が同人の友人等から借り入れたもの

である」との■■■■の答述を引用して、「しかしながら、上記(イ)のCに

記載した事実から判断すると(中略)■■■■が友人等から借り入れたもの

であり、同人の個人的債務であることは明らかである」と主張しているが、

①回答書及び聴取書からは、■■■■個人の債務であることは、必ずしも明白

ではないこと

②聴取書の「誰が誰から借りた債務であるか」の質問に対して■■■■は回答

をしていないこと

③異議申立書の理由欄の「その際買い戻す資金を小生は友人数名より借金し、

2~3年後」との請求人の記載部分の「小生」との表記が、■■■■個人と

解されなくもないが、当該記載が争点の明らかになった原処分以後のもので

あり、代表取締役■■■■とも解されること

④■■■■は、倒産に対する懸念から業務を■■■■から請求人へ移行させ、

事実、平成4年10月ころ■■■■は倒産した経緯を考えれば、請求人が本件

借入金の主体となることに個人的理由は認められないこと

からすると、本件借入金は■■■■個人の債務である旨の原処分庁の認定は

根拠があいまいであるといわざるを得ず、本件借入金は■■■■個人の債務

であると認定することはできない。

・原処分庁は、「請求人が本件簿外資金を捻出し、■■■■が友人等に本件

借入金を弁済したことは、とりもなおさず■■■■に同人の個人的債務を弁済

するための資金を供与したこととなる。そして、請求人において、■■■■に

対する貸付金の計上もなく、同人との金銭消費貸借契約の存在も認められない

ことからも、請求人が■■■■に対して経済的利益を供与したものとして、

本件借入金相当額31,300,000円の賞与の支給があったものとする

のが相当である」と主張するが、簿外の本件借入金を本件簿外資金により

返済したという事実が明らかである以上帳簿に記載のないことは当然であり、

また、請求人から金銭消費貸借契約書等も提出されていることから、この点に

関する原処分庁の主張を採用することはできない。

いかがでしょうか?

金銭消費貸借契約書の提出等があったにも関わらず、3,000万円以上の

認定賞与とされた原処分には驚きを隠せませんが、実際に起きた事案である

ことも事実です。

税理士の対応がどうであったのか?という疑問は残りますが、強引な否認が

行なわれることは現時点でもあります。

そういう意味では「適正に反論」していくことが大切ですが、状況は個別的

で、より多くの事例を知っておくことが大切ですので、本件も類似事例に

当たった時のために覚えておいて頂ければと思います。

 

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