1318社長1人飲み交際費が重加算税とされた事案
※2024年9月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
今回は重加算税を課された(裁判でも負けた)事案で、
税理士・会計事務所にとっては、顧問先社長に
「あるある」の内容となっています。
取り上げるのは東京地裁:令和2年3月26日判決
(Z270-13406)ですが、控訴審である
東京高裁:令和3年1月28日で棄却されており、
重加算税の賦課が確定しています。
【前提事実】
・3社の経営者が個人的に通っていた高級クラブの
費用を交際費に計上していた
・ひいきにしていたホステスが移籍するたびに
その移籍先のクラブに通っていた
・この「1人飲み」に関して、経営者は
同行者がいる/業務関連性など反論をしていない
・反面調査によっても1人飲みであることは明らか
・1回あたり20万円で月平均5回、調査対象期間内
において総額6,600万円を超えていた
・交際費を貸付金として修正申告を提出
(未収利息の計上アリ)
・この修正申告に対して重加算税が賦課された
重加算税の論点を取り上げる前に、この事案で
興味深い点は、社長の個人的支出である飲食代を、
役員賞与(社長に対する経済的利益の供与)ではなく
貸付金として計上する修正申告が認められており、
かつ裁判でもこの点が争われていないことです。
おそらく、税務調査内において役員賞与か貸付金か
双方においてやり取りがあったものと推察しますが、
裁判の争点になっていないということは、
税務署側も調査内で貸付金として了承したという
経緯があったものと推察します。
本メルマガの主題である重加算税ですが、
上記判決において東京地裁は下記としています。
【裁判所の判断内容】
本件各支出額を交際費に計上した総勘定元帳を
作成することにより、本件各支出額を交際費と
仮装して損金の額に算入した上で、法人税等の
各確定申告書を税務署長に提出したのだから、
原告らは、本件各当初申告において、法人税等の
課税標準の計算の基礎となるべき事実を仮装し、
その仮装したところに基づき納税申告書を
提出したというべきである。
貸付金であることを前提に、その貸付けによって
生じた本件各利息額が雑収入として益金の額に
算入されているところ、原告らは、本件各当初申告
において、本件各支出額が原告らの交際費である
かのように仮装することにより、上記貸付金を
貸借対照表の資産の部に計上せず、その結果、
貸付金に係る本件各利息額を隠ぺいしたものであり、
本件各当初申告において、法人税等の課税標準の
計算の基礎となるべき事実を隠ぺい、仮装し、
その隠ぺいし仮装したところに基づき
納税申告書を提出したというべきである。
さて、この判決内容・判断はかなりムリがある
と言わざるを得ないでしょうし、実際に
各専門家から異論が多数出されているのも事実です。
この判断内容を大きく捉えると、
交際費にならないと認識しながら損金算入した
⇒
事実を仮装した
という論法かと理解していますが、8月21日に
配信した「重加算税を体系的に理解する(故意性)」
に書いたとおり、いかに納税者に認識があったといえ、
それはあくまでも故意性があるのであって、
具体的な「隠蔽または仮装」行為がない限り、
重加算税にはならないと考えます。
上記事案はあくまでも、金額が多額であり、
3社に分散して交際費枠が大きい=通常なら
損金不算入になるところ損金算入できている等の
事情があるとはいえ、さすがにムリ筋でしょう。
一方で(裁判はともかくとして)現実的に考えると
税務署は「役員賞与(損金不算入)+源泉課税」
でないから重加算税に固執したのかもしれません。
どちらにせよ、このような判決が出ると、
調査官が裁判例を調査内で提示し「社長の1人飲みは
重加算税になります」と指摘する可能性もあり、
税理士・会計事務所としては反論が難しくなります。
この判決の前提事実がシンプル過ぎて、
「前提事実が相違する=結論が相違する」という
反論が難しいからです。
社長の1人飲みが多い・多額の法人を関与している
のであれば、税務調査に関係なく、社長に
この判決を明示して「重加算税で追徴税額が多額になる
リスクが高いですよ」とアラートを出すことで、
交際費を減らすという指導には使えるかもしれません。
来週水曜の本メルマガでは、さらに
重加算税の論点を掘り下げて解説します。
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