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2022.08.05

調査官の守秘義務と納税者の守秘義務の関連性

※2021年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

毎週金曜の本メルマガでは、税務調査を体系的に理解する
内容を連載で解説していますが、今回は
納税者(被調査者)に職業上の守秘義務がある場合、
調査官の守秘義務との関連性について解説します。

まず、税務調査を実施する調査官には、
国家公務員法100条・109条と、
国税通則法第127条の二重で守秘義務が課されています。

一方で、納税者(被調査者)にも法律規定で
守秘義務が課されている職業があるわけです。
典型例は、医師や弁護士・税理士などの士業です。

常識的に考えると、職業上の守秘義務があるからといって
税務調査を拒否できるわけではないことは
理解できるとは思うのですが、ではどのような
整理・理解をすべきでしょうか。

国税庁が公開しているFAQには下記とあります。

「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」
問8 調査対象となる納税者の方について、医師、弁護士のように
職業上の守秘義務が課されている場合や宗教法人のように
個人の信教に関する情報を保有している場合、業務上の秘密に
関する帳簿書類等の提示・提出を拒むことはできますか。
(答)
調査担当者は、調査について必要があると判断した場合には、
業務上の秘密に関する帳簿書類等であっても、納税者の方の
理解と協力の下、その承諾を得て、そのような帳簿書類等を
提示・提出いただく場合があります。いずれの場合においても、
調査のために必要な範囲でお願いしているものであり、
法令上認められた質問検査等の範囲に含まれるものです。
調査担当者には調査を通じて知った秘密を漏らしてはならない
義務が課されていますので、調査へのご協力をお願いします。

これは一般論ですが、職業上の守秘義務があったとしても、
「正当な理由がある場合」は守秘義務が解除される
例外的なケースも存在します。典型例は犯罪捜査に
応じるためにクライアントの情報を開示することでしょう。

税務調査はあくまでも任意調査であることから、
上記FAQでは「調査へのご協力をお願いします」と
書かれていますが、調査官には質問検査権があることから、
少なくとも帳簿書類等は提示する必要があります。

一方で、調査現場で問題となりがちなのは、
医師におけるカルテ・税理士における業務処理簿など、
クライアントの個別情報が載っているモノでしょう。

実際に、医師の税務調査においてカルテが
質問検査権の範囲内かを争った裁判例もいくつかあります
(「平成元年9月14日東京地裁」
「平成2年7月19日最高裁判所第一小法廷」など)。

これら裁判例では、カルテも質問検査権の範囲内
であると判断されています。

判断は個別のケースによって分かれるとは思いますが、
質問検査権とはあくまでも、納税者の申告内容について
売上・所得・税額などが正しいかを確認することが
目的ですから、調査官がカルテや業務処理簿などを
確認しなければ所得・税額が正しさを検証できない
場合においては、たとえ職業上の守秘義務があった
としても開示しなければならないということです。

逆にいえば、カルテや業務処理簿などを確認するまで
もなく、所得・税額の確認・検証ができるのであれば、
その必要性があるとはいえないでしょうから、
開示する必要はないとも考えられるでしょう。

本メルマガではすでに、税務調査の対象物が
「その者の事業に関する帳簿書類その他の物件」
であり、「その他の物件」とは不確定概念である
ことから、都度判断が必要なことは解説しました。

この論点と併せて、守秘義務との関連性を考えると
理解は深まると思います。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

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