2016.04.27

過大役員報酬への反論

※2014年11月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

この記事の当時、過大役員報酬を否認され裁判で争っている
事案が公表され、マスコミに大々的に取り上げられています。

「役員報酬、高すぎる? 「残波」蔵元、国税と訴訟に」

http://www.asahi.com/articles/ASGBP56LTGBPUTIL02L.html?iref=com_alist_6_01

この事案はすでに裁判までいっているので、
「そもそも法律がおかしい!」
「役員報酬を会社が勝手に決めて何が悪い!」
という論点は、マスコミ受けとしてはアリですが、
税務調査の現場としてはナシでしょう。
法律を守るのが国民の義務であり、税理士の役割ですから。

この訴訟の先行きは、税理士であれば誰しもが注視する
ところではありますが、実際の税務調査で過大役員報酬と
指摘された際、どのように反論すべきでしょうか?

税務調査では、社長の妻など親族が役員に入っている場合、
勤務実態を確認するために、「役員のタイムカードを
見せてください」と調査官に言われることがあります。

この発言は、そもそも(一般的にいう)「従業員」と
(法律的な)「役員」の違いを無視した発言と捉えることができます。

なぜなら、役員は従業員とは明確に相違し、
労働法で守られない存在だからです。
労働法で守られていない、ということは
労働時間に準じて報酬が払われないことを示唆しています。

会社と役員の関係を整理してみましょう。

役員(取締役)は、株主から会社(法人)の経営に関して
「委任」を受けている、というのが会社法上の規定です。

委任(契約)は民法上、原則として無報酬と規定されています。
(民法648条)

しかし、特約(別に定めた事項)がある場合は
報酬を請求することができるため、株主総会で
役員報酬の総額を決めれば、その範囲内で支給することができます。
(委任者である株主の許可)

この法律行為を準用して、税法でも役員報酬の
形式基準として、株主総会の決議を必要としています。

だからこそ、役員は従業員とは「法的に」立場が違い、
役員報酬は労働時間に準じない、となるわけです。

では、役員報酬は何に準じるのでしょうか。
ここをどう主張するかが、税務調査のポイントです。

過去に、下記のような事案がありました。

・社長の妻(取締役)の役員報酬が2000万円弱
・業務内容・労働時間に比して高額との否認指摘
・ただし、妻は銀行借入金の一部が連保に入っている

調査官にこのように主張してもらいました。

「では、あなた(調査官)に役員報酬を2000万円弱
毎年あげるので、その代わり連保に入ってください、
と言えば、あなたは了承するんですね?」

調査官の答えは明確に「No」でした。
このオファーを断るということは、連保のリスクと
役員報酬の額が見合わない、ということです。
つまり、現状の役員報酬はリスクに比して低い、
ということに他なりません。

連帯保証に入っている必要はありません。
私が言いたいのは、役員報酬は「付加価値」で
決まるのであって、労働時間で決まらないということです。

ここでいう「付加価値」とは、負っているリスクであり、
経営者としての手腕(他社より利益率が高いなど)であり、
会社に対する貢献度(仕事をもってくるなど)なのです。

反論方法を税務調査の入り口で間違ってしまうと、
過大役員報酬も突き詰めれば、上記裁判のように
法的に照らし合わせる(同業者の平均など)しかありません。

そうなる前に、調査の現場では
上記の反論方法を展開すべきなのです。

 

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