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2021.10.26

貸倒損失:不良債権の譲渡による損失計上

※2020年5月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

本メルマガ金曜では、時効・債務免除による
貸倒損失の要件について解説してきましたが、
今回は「債権譲渡による損失」を解説します。

実質的に回収不能と判断した債権を、
サービサー(債権回収業者)などに譲渡
することにより、損失を計上することは
一般的な手法としても認められています。

銀行などの金融機関は、貸倒引当金を
計上しながらも、損失を計上したい際には
サービサーに譲渡・売却することによって
損失を確定させる方法を広く採用しています。

また「サービサー」なる業者・会社は
あまり一般的ではないかもしれませんが、
昨今は弁護士・司法書士が実質的に経営する
法人などもサービサーをしていることから、
金融機関だけが行う特殊取引でもありません。

2,000万円の債権を債務免除すれば
2,000万円の貸倒損失を計上することで
有所得法人は税効果の恩恵がありますが、
2,000万円の債権を500万円で債権譲渡すれば、
500万円をサービサーから回収しながら、
1,500万円の譲渡損による税効果があります。

いわゆる不良債権を譲渡・売却することで
損失を認められるためには、大きく
2つの要件を満たす必要があります。

(1)譲渡した事実があること

債権をグループ会社に形式的に移管した
だけであって、債権を譲受した会社が
実質的にリスクを負わないようなケースは
債権譲渡(売却)損は認められません。

これについては、法人税法基本通達
2-1-44を参照してください。

(2)譲渡価額が適正であること

不良債権の譲渡価額は適正額であることが
必要で、時価よりも低い価額で譲渡された
場合は寄付金認定のリスクがあります。

この「時価」については個別通達があります。

「適正評価手続に基づいて算定される債権
及び不良債権担保不動産の価額の税務上の
取扱いについて(法令解釈通達)」

ただし、債権譲渡の相手方がサービサー
など、利害関係ない第三者である場合、
譲渡額が時価と推定されるでしょう。

なお、関連会社(兄弟会社を含む)に
対する貸倒損失・債権譲渡損については
税務上の否認リスクがつきまといますが、
関連会社であっても第三者に譲渡した
ケースで債権売却損が認められた
(寄付金認定が取り消された)裁決事例も
ありますので、該当しそうなケースで
悩まれている方は下記をご覧ください。

平成17年2月14日裁決事例
(名古屋 争点番号:300712050)

非公開裁決のため、「債権売却損」の
キーワード検索で出てきます。

「裁決要旨検索システム」

実質的に回収不能な債権については、
債務免除による貸倒損失の計上と併せて
サービサーなどへの債権譲渡の可能性を
模索すべきと考えます。

来週金曜のメルマガからは、貸倒損失の
「基本通達」(9-6-1~9-6-3)
について解説していきます。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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