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2015.12.15

おとき(お斎)の費用は交際費か?

※2014年3月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

日本中央税理士法人の見田村元宣です。

さて、今回は「おとき(お斎)の費用は交際費か?」です。

寒い時期は亡くなる方も多く、例えば、東京都が発表している直近の統計資料

によれば、月別の死亡人数(平成24年中)は下記となっています。

1月 11,319人

2月 9,967人

3月 9,582人

4月 8,431人

5月 9,348人

6月 7,821人

7月 8,197人

8月 8,837人

9月 7,650人

10月 9,412人

11月 9,665人

12月 9,422人

そして、会社の代表者が他界した際は社葬を行うことも多く、その社葬に伴う

費用をどう処理すべきかが論点になることもあります。

そこで今回は昭和60年2月27日の裁決を例に挙げ、この点を解説します。

この事案は「請求人の前代表者の死亡に伴う葬儀(社葬)に引き続き、場所を

ホテルに移して行なった、いわゆる「おとき」の処理につき争われたものです。

この事案は

○おときの費用1,562,120円とおときの際の引物の購入費

 756,000円(合計額2,318,120円)を請求人が損金処理

○原処分庁は遺族と友人に係るおときの費用286,388円と引物の購入費

 の全額756,000円の合計額1,042,388円はは前代表者の長男

 が個人負担すべき費用(役員賞与)と否認

○残額は1,275,732円は交際費と否認

したものです。

また、基礎事実としては下記の状況となっています。

○請求人は取締役会において、前代表者の生前の功労に報いるため、社葬を

 行うこととした

○社葬は○○寺で行われ、参列者は約450名であり、おときは葬儀終了後、

 ホテルで行われており、おときの会場に祭壇を設けたり、焼香及び読経等を

 した事実は無い

○出席人員は120名であり、これらの人には社葬の案内状を発送する際に

 おときの案内状も同封していた

○おときに出席した人員の内訳は、請求人の得意先等取引関係者90名、

 前代表者の親族、かつ、請求人の役員、株主等請求人の関係者でもある者

 8名、請求人とは直接関係のない前代表者の親族、友人等22名

○出席者1人当たりの費用は、13,017円

○社葬の参列者が持参した香典は、前代表者の長男個人が取得

○おときに出席しない会葬者に対し、総額999,370円(別途、送料

 60,940円)相当の品物を香典返しとしている

さあ、こういう場合はどう処理すべきでしょうか?

まずは、基本通達をみてみましょう。

(社葬費用)

9-7-19 法人が、その役員又は使用人が死亡したため社葬を行い、その費用

を負担した場合において、その社葬を行うことが社会通念上相当と認められる

ときは、その負担した金額のうち社葬のために通常要すると認められる部分の

金額は、その支出した日の属する事業年度の損金の額に算入することができるものとする。

(昭55年直法2-15「十六」により追加)

(注)会葬者が持参した香典等を法人の収入としないで遺族の収入としたときは、

これを認める

社葬費用は法人の損金にしておきながら、香典収入は遺族の収入にすることも

可能ですので、この注書きも併せて覚えておいて頂ければと思います。

そして、国税不服審判所は下記と判断しました。

○社葬のため通常要すると認められる金額には、故人の遺族の負担すべき費用

 は含まれず、通常は、会葬のための費用がここでいう社葬のため通常要する

 費用に当たるものと解するのが相当である

○葬儀の後に場所をホテルに移して行われたおときは故人の追善供養のため

 行われたものと認められるから、この費用は会葬のための費用ということは

 できない(社葬費用には該当しない)

○前代表者の生前の請求人に対する功績に報いるため社葬を行い、これを機に

 請求人の業務に関係の深い得意先等の関係者を招待して、これらの者と請求

 人の前代表者である故人のめい福を祈るなどするため、おときに係る酒食を

 供したものであるから、これらに相当する支出は、個人負担すべき部分を除

 き、請求人の支出とし、この支出は得意先、仕入先等取引関係者に対する接

 待、供応のための費用として交際費等とするのが相当

○おときの費用のうち、近親者部分についてはそもそも社葬費用に当たらない

 ものであるところ、請求人と直接関係のない前代表者の親族、友人等の者に

 係る接待費用は、請求人において負担すべきいわれはなく、遺族である前

 代表者の長男個人が行うべきおときを請求人が行ったおときに併せて行った

 ものなので、役員賞与となる

○引物購入費については、社葬に参列した者が持参した香典は、これを全額

 前代表者の長男個人が取得し、おときの出席者を除く会葬者に対しては後日

 香典返しを行っているところ、おときの出席者にはおときの際の引物のほか

 に香典返しを行つていないことから、おときの際に供された引物も香典を

 収受した者が負担すべき香典返しと認められる

○請求人が負担した引物購入費は前代表者の長男が負担すべきものであり、

 役員賞与となる

いかがでしょうか?

社葬に伴う費用は人の死にまつわるものだけに「それは損金になりません」

とは心情的にも言いにくい側面があります。

ただし、理論的に考えれば当然なのかもしれませんが、実際の裁決でも否認

されている事例があるので、覚えておいて頂ければと思います。

「過去に実際に否認されている事例があるので・・・」と言えば、

説明しやすい要素もあるかと思います。

なお、法人税の話ではなく、相続税の話になりますが、おときの費用は

債務控除できないとされた裁決(平成10年6月12日)もあるので、

併せてご確認頂ければと思います。

 

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※2014年3月の当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

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