• HOME
  •  › ブログ
  •  › 個人事業主の養老保険は必要経費か?
2017.06.26

個人事業主の養老保険は必要経費か?

※2017年3月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

株式会社InspireConsultingの久保憂希也です。

個人の確定申告が終わったばかりですが・・・

個人事業主に対する税務調査で否認対象になりやすい
「養老保険」の必要経費性について解説します。

個人事業主が加入している養老保険の場合、
従業員の福利厚生というよりは、事業主の利殖が
目的と考えられるケースが散見されます。

まず、個人事業主が加入する養老保険が必要経費になる
(2分の1は資産計上)「形式」基準は下記となります。

保険契約者:事業主
被保険者:従業員
保険料負担者:事業主
満期保険金受取人:事業主
死亡保険金受取人:従業員の遺族

という加入条件で、かつ「全従業員」が加入していることです。

保険の場合、通常は「普遍的加入」と呼ばれていますが、
税務上の考え方でいうと、先週解説した
「水平的公平性」が担保されている状態を指します。

一方で、上記の形式・外形的な要件を満たしていたとしても、
実質的な判断基準を満たしていなければ
税務調査で否認されるリスクを抱えています。

繰り返しますが、養老保険を福利厚生費として
必要経費に算入することができるのは、あくまでも
従業員に対する福利厚生が目的だからであって、
個人(事業主)の利殖が目的ではないことが明確な場合です。

【実質的な基準】
(1)各従業員の退職年齢を考慮した契約期間とされている、
または、退職までの期間において、順次保険契約を更新している
(その旨の規定もしくは各従業員との契約があればベスト)

(2)従業員が退職した場合には、該当する保険が解約されている

(3)事業主が受け取る満期保険金について、従業員の
退職金原資に充てている、もしくは退職金原資に充てることの
規程が存在する、またはその旨の契約が存在する

最近の判決でも、個人事業主(眼科医及び歯科医)が、
雇用する従業員を被保険者とする養老保険契約・
がん保険契約を締結し、その保険料の一部を福利厚生費として
必要経費に算入して申告しており、
納税者が負けた事案が存在します。

「従業員を被保険者とする養老保険契約の保険料」
(平28年4月20日 広島高裁 Z888−2037)

【要旨】
満期保険金等の受取人が従業員ではなく控訴人であること、
解約返戻金等は、 退職金規程に基づく支給予定額の
1.9倍以上となっていること、従業員退職後も
保険契約が継続していること等が認められ、
これらの事情は、控訴人において、保険契約が従業員の
福利厚生のためといえるだけの必要な整備をとっておらず、
かつ、現実にも、福利厚生のために利用していないことを
明らかにしているものといわざるをえない。したがって、
各保険契約が福利厚生目的とは認められない。
本件養老保険契約は、控訴人らが多額の解約返戻金等のある
保険契約を締結し、実質的に自己資金を留保しつつ、
その保険料を必要経費に算入することを企図したものと
認められるのであるから、死亡保険金の受取人を
従業員の家族としていることを考慮しても、
支払保険料全体が家事関連費に該当するというほかないし、
当該支払保険料の中で業務の遂行上必要な部分として
明らかに区分することができるとは認められない。

形式要件だけを満たしていても、被保険者となっている
従業員の年齢・契約期間・保険料の支払方法等から考えて、
さらに実態から考えた場合に、福利厚生目的でない
と判断される保険料は否認されるというわけです。

確定申告時には、(業務処理の)時間的な関係から
形式基準から判断して必要経費にしていたとして、
今から実態を見直す必要はあります。

この処理を機械的にしているケースは、
ぜひ、注意してください。

 

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

毎週水曜日に配信する『税務調査対策のメールマガジン』では、最新の税務調査事情はもちろんのこと、調査官の心理、税務署のウラ側など元国税調査官だからこそ語れるマニアックなテーマまでをお届けします。
「こんなことまで話して本当に大丈夫ですか?」 と多くの反響を頂く税理士業界では話題のメルマガです。
お名前とメールアドレスを登録するだけで 毎週【 無料 】でメルマガを配信いたします。