2015.02.04

借用概念とは?

今回のテーマは、『借用概念とは?』です。

※(2011年5月25日配信)

5月も下旬になり、税務調査が収束の時期になってきました。(国税は7月10日に異動があり事務年度が変わります)

1ヶ月ほど前になりますが、2011年4月27日に当メルマガで配信しました
「VOL.106国税庁の質疑応答事例は否認根拠?」では、
居酒屋がテナントとして入居している建物に行った内部造作の
減価償却方法について否認指摘を受けた事例を紹介しました。

この法人は内部造作を「建物附属設備」として
定率法で減価償却していましたが、
調査官は下記を根拠に「建物」だと主張してきたのです。

国税庁ホームページの質疑応答事例
「他人の建物について行った内部造作の減価償却の方法」

http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/hojin/04/10.htm

さて、ここで否認指摘に対する反論を、
「借用概念」からロジックを組み立てました。

借用概念とは、税法に特別な定義規定がない限りは、
税法以外の私法(会社法や民法が多い)など、
他の法分野の概念から定義規定を借用する考え方で、
租税法の有力見解であり、判例もこれを支持しています。

上記の例で書きますと、「建物」か「建物附属設備」の
定義規定は税法に明確な記載はありません。

「減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表第一」の耐用年数表
を見ても、「構造又は用途/細目」はありますが、
これはあくまでも、分類ができた後に当てはめるものであって、
これ自体が分類の基準を定義しているものでありません。

そこで、否認指摘に対して下記のように反論しました。

「税法上、建物および建物附属設備を明確に区分する規定がない以上、他の法令を適用解釈せざるをえません。

ここで、不動産登記法規則第111条において、
「建物は、屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、
土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に
供し得る状態にあるものでなければならない。」とあります。

つまり建物とは、土地に定着した構造物として、屋根と壁を有し、
それらを支える構造を有し、居住、作業場、倉庫、店舗、工場等
の用途に利用されるものです。今回問題になっております、
飲食店舗における内部造作につきましては、
賃貸借契約が終了した時点で原状回復を行う場合には、
当方において行った内部造作を全て取り壊してから返却するものであり、今回の造作が建物を構成している一部分だと考えることはできません。」

つまり、この事例においては不動産登記法が借用概念であり、
そこからテナントとして入居している建物に行った内部造作が
建物附属設備であるというロジックを作ったのです。

借用概念を重視した判決で有名なものに、
東京地裁平成17年9月30日があります。

ここでは、
「法人税法施行令177条4号及び法人税法施行令184条1号に規定する

「匿名組合契約」とは、商法上の匿名組合契約を
指すものと解するのが相当である」と判示しています。

税務調査の現場では、税法に明確な定義がなく、
曖昧なまま否認指摘が行われるケースが多いです。

このような場合は、ぜひ他の法令を調べていただき、
「借用概念」からロジカルに反論してください。

 

※2011年5月当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんので
ご注意ください。

また、ブログの内容等に関する質問は、
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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