2022.09.16

無予告調査での事前通知

※2021年9月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

毎週金曜の本メルマガでは、税務調査を体系的に理解する
内容を連載で解説していますが、前回の
無予告調査における法律~通達規定の解説から引続き、
今回は無予告調査における事前通知を取り上げます。

無予告調査が行われる目的・趣旨は、
納税者に事前通知をすれば税務調査が実施できない、
もしくは無為にされる可能性が高いと
国税側が(事前に)判断するからです。

たとえば現金商売の場合、国税の狙いとしては

●現金実査を行うことで、レジ・金庫から
売上金が抜かれていないかを確認するため

●売上伝票・レジロールなどを臨場・実査し、
直近の売上を確認するため(現金と照合)

などが挙げられます。事前通知することで、
その時だけ「現金の調整」「売上伝票の整備」を
されてしまえば、税務調査の実効性がなくなるという
懸念から無予告調査を実施するという趣旨です。

一方で、無予告調査を実施し、事業所などに臨場、
納税者に対面してしまえば、無予告調査の目的は
達成できたことになりますので、【臨場時に】
対面で事前通知をすることになっています。

この点は、事務運営指針で下記と規定されています。

「調査手続の実施に当たっての基本的な
考え方等について(事務運営指針)」

第2章2(3)注(2)
事前通知を行うことなく実地の調査を実施する場合
であっても、調査の対象となる納税義務者に対し、
臨場後速やかに、「調査の目的」、「調査の対象となる税目」、
「調査の対象となる期間」、「調査の対象となる帳簿書類
その他の物件」、「調査対象者の氏名又は名称及び住所
又は居所」、「調査担当者の氏名及び所属官署」を
通知するとともに、それらの事項(調査の目的、
調査の対象となる税目、調査の対象となる期間等)以外の
事項についても、調査の途中で非違が疑われることと
なった場合には、質問検査等の対象となる旨を説明し、
納税義務者の理解と協力を得て調査を開始することに留意する。
なお、税務代理人がある場合は、当該税務代理人に対しても、
臨場後速やかにこれらの事項を通知することに留意する。」

国税庁サイトで公表されているFAQにも、
下記のように記載があります。

「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」
問20 実地の調査が行われる場合には
必ず事前通知がなされるのですか。
(答)
(略)なお、事前通知が行われない場合でも、運用上、
調査の対象となる税目・課税期間や調査の目的など
については、臨場後速やかに説明することとしています。

無予告調査の場合、実務上は調査官の臨場後に
顧問税理士に連絡が実施されるわけですが、
これは上記事務運営指針に沿っている一方で、
調査の対象期間など正式な事前通知はされない
ケースの方が圧倒的に多く、これは正確には
通達(事務運営指針)違反となっています。

では、無予告調査においても事前通知の内容を
きちんと確認しておくべき(納税者の)実益は
どこにあるのでしょうか。

来週金曜の本メルマガでは、事前通知の効果と
調査範囲の拡大について解説します。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

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